大植英次/大阪フィルのベートーヴェンチクルスⅢ ~ 新たな定番
2007/11/29

4回シリーズの3回目、通し券を買ったものの、前の4・5・6番と次の9番はパスするので、結局は半分だけ聴くことに。7・8番のセットじゃ、昔なら一番入りの悪い組み合わせかも知れないが、今や様変わり。補助席まで出る超満員。

ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
 ベートーヴェン:交響曲第8番へ長調作品93

第7交響曲、マンガやテレビの影響は凄いもので、この1・2年では一番演奏機会の多いシンフォニーではなかろうか。

この曲は、2年前の定期演奏会でもこのコンビで採り上げているが、そのときの出来とは段違い、断然今回のほうがいい。演奏頻度が高いということと、演奏水準が高いということは同義ではないにしても、やはりプラス面が多いと思う。ベートーヴェン交響曲全曲演奏会は今シーズンでもっとも力を入れているシリーズだし、ルーチンにはならないという条件も整っている。

何より、前回に比べて音楽の締まりが格段によくなった。随所に粗さも感じた前回と違い、音の輪郭もはっきりしているし、各パートの受け渡しも緊密、濁ったところやぼやけたところが極めて少ない演奏だ。すっきりとスピーディーでいて、余計な小細工なし。タクトなしで指揮台に上がった大植さんの動きも必要最小限、同じ曲を演奏していながら、かつてのオーバーアクションからは想像できないものだ。

もうひとつの第8交響曲、普通に考えると、8番・7番の順に一夜のプログラムを組みそうなものだが、あくまでも作曲順にこだわったようだ。まあ、踵を接した曲なんだし、そこまでの必要もないと思うんだけど。

それで、このちょっと短めのシンフォニー、私は好きな曲なんだけど、第7番に比べると演奏は見劣りした。今回の2曲、性格の違いを際だたせるというよりも、同質性を強調するようなアプローチのように思える。エネルギッシュな面を前面に出すことで、この曲の典雅さが影を潜めてしまった感がある。音ももやっとしたところが多く、第7番ほどキリリと締まっているわけではない。第7番とは演奏頻度が天地ほどの差があるから、こうなっちゃうんだろうか。

今シーズン、このコンビの演奏を聴くのは、私はこれが最後、次のシーズンのプログラムを楽しみに待つことにしたい。

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