びわ湖ホールの「アーサー王」~ これ、オペラ?
2007/12/22

珍しいものを聴けるチャンスは逃さない。でも、雨が降り続くなか大津駅から20分も歩くと、靴は浸水、蒸れるし冷たいし、あまりいい気分ではない。これからオペラというのに最悪の状況。ところが、小ホールで聴いた「アーサー王」、思いのほか楽しめたので、幸先のよい三連休のスタートとなる。

びわ湖ホール声楽アンサンブル第37回定期公演
 パーセル:歌劇「アーサー王」(演奏会形式)
 指揮:本山秀毅
 管弦楽:大阪チェンバーオーケストラ
 リュート:高本一郎
 リコーダー:中村洋彦、中村俊子
 出演:びわ湖ホール声楽アンサンブル
   上田祥子/栗原未和/黒田恵美/
   宮西央子(客演)/江藤美保/大垣加代子/
   小林久美子/西あかね(客演)/竹内公一/
   竹内直紀/二塚直紀/松本 晃/西田昭広/
   松森 治/迎 肇聡/安田旺司

自分の感性頼り、例によって予習はしない。ホールに着いてプログラムを貰って初めて、どんな作品かを知るという有様。休憩を入れて2時間なら短いなあ、バロック・オペラなら3時間は優にかかると思っていたのに。セミ・オペラという形式だということも、説明を聞いて初めて知る。セミセリアのイギリス版かと思うと、それが全然違う。歌劇と言うより、これは演劇と言うほうが正しそう。

「アーサー王」というタイトルなのに、その英傑役は登場しない。判りやすく言うと、全五幕がそれぞれ二場に分かれて、前半が演劇、後半が音楽劇、主要登場人物は歌うことはない。今回の公演では演劇部分は全部カット、音楽のナンバーのみ、それで2時間で終わる。

ブリトンのアーサー王はサクソンのオズワルドと宿敵関係にあり、コーンウォール公の娘エメリーンをめぐり恋敵でもある。両者の戦い、恋人の誘拐と奪還などが芝居として演じられ、双方に与する魔法使いやら妖精やらが登場して音楽の場面を構成するという趣向。だから、音楽部分は脇筋であり、物語の場面の雰囲気を醸し出すという位置づけにある。とまあ、こんなことを予習しても仕方ないし、聴けばすぐに判ること。

お芝居の付随音楽だけを聴くという演奏会だったが、意外にも楽しめた。大仰さがなく、とてもシンプルで、すうっーと耳に入り込んでくるパーセルの楽曲。それぞれが短めだし、ソロとコーラス、アンサンブルとコーラスの配合もいい。ナンバーによって曲想の変化も豊かで、退屈するんじゃないかとの心配があったのに、飽きさせない。

女声8人、男声8人のびわ湖ホール声楽アンサンブル、大ホールでの公演のコーラスとしては何度も聴いているが、あれは東京の団体との混成だし、このアンサンブル単独でという機会はあまりない。323人の小ホールで、それぞれにソロもある作品を聴くと、実力のほどが明らかになる。なかなか立派なものだ。演奏会形式、演技がつく訳でなく、楽譜を見ながらの棒立ちスタイルだとしても。

創立から10年と言うことだが、かなりメンバーの入れ替わりもあるようす。主役級での舞台経験がある人の名前も何人か見あたる。この秋にヘンデルで聴いた迎肇聡さんの名前も。もっとも出番の多かったのが黒田恵美さん、複数の役を担当、多くの重要なナンバーを任されていた。

本山秀毅指揮の大阪チェンバーオーケストラの演奏も歯切れが良くて好感を持った。初めは管とのコンビネーションが良くない感じだったが、演奏が進むにつれて違和感もなくなった。しかし、団体の特性に合っているとは言え、よくまあこんな作品を見つけてくるもんだ。小ホールとは言え、会場を満席にしたのはご立派。

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