藤原歌劇団「どろぼうかささぎ」 ~ 鉄ちゃん、大宮へ
2008/3/8

去年の秋から気になっていて、東京に出かけたときに寄ろうと思っていた場所があった。新しく出来た大宮の鉄道博物館。やっと実現。午後3時開演の上野のマチネまでの時間を有効活用。と、それじゃ時間が全然足りない、観るものが多すぎて。でもそれは後からわかったこと。

屋内展示もさることながら、展望デッキからいろんな列車が見られる。新幹線、在来線、ニューシャトル、春の陽気でデッキは鈴なり、横にいる小学生は時刻表を開いてデジカメを構えている。そこは子ども、当地点通過時刻を割り出すダイヤグラム(線図)までは持っていない。でも、きっと立派な鉄ちゃんになることだろう。

なんだか、どっちがメインイベントか判らない土曜日、いやいや、「どろぼうかささぎ」邦人キャストには期待していた。高橋さん、五郎部さん、二人が好調なら前夜の公演を上回るのではないかと。

ニネッタ(ファブリーツィオ家の小間使い):高橋薫子
 ジャンネット(ファブリーツィオの息子):五郎部俊朗
 ゴッタルド(代官):久保田真澄
 フェルナンド(ニネッタの父):田島達也
 ルチーア(ファブリーツィオの妻):山崎知子
 ファブリーツィオ(金持ちの地主):東原貞彦
 ピッポ(ファブリーツィオに仕える若い農民):但馬由香
 イザッコI(小間物商):所谷直生
 指揮:アルベルト・ゼッダ
 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
 合唱:藤原歌劇団合唱部
 演出:ダヴィデ・リヴァーモア

前夜は間に合わなかったので比較は出来ないが、この日は序曲からして、ずいぶんオーケストラが良くなった気がする。メンバーが違うのか、二日目で調子が上がってきたのか。聴き進むにつれて、やはり、はっきりと判るノリの良さだ。第二幕は前夜も悪くなかったけど、ちっとも走らなかった第一幕の音楽に生気が見られるようになった。ゼッダとの呼吸が合いだしたのか。

それで、主役のコンビ、高橋さん、五郎部さん、全般の出来は前日のイタリア人コンビよりも上だと思う。Aキャストが必ずしも良いとは限らない、それだけの国内レベルに達しているのはうれしいことだ。

高橋さんはずいぶん前からキャリアがあるが、どんどん良くなって来ている。ほんとに息の長い人だ。このニネッタ役では、予想を上回る芯と張りのある声、メリハリのついた歌でびっくり。レチタティーヴォや語りの部分ではフォルテに分があるが、聴かせどころでは一歩リードというところか。声楽的な満足度では高橋さんが上、思いがけない偶然に翻弄されるヒロインの悲しみ、苦悩の表現ではフォルテかな。

五郎部さんの声質がこの役に合うのかどうか、ちょっと心配なところもあった。シラグーザが好調であれば彼の声のほうがぴったり、でも前日の状態ならこちらのほうがいい。登場のアリアを含め第一幕のナンバーは、かなり軽めの声でも大丈夫、五郎部さん、喉のほうは好調のようでずっと安定感がある。

他のキャスト、代官ゴッタルドの久保田真澄さん、声の力では前日の妻屋さんに譲るが、悪くはない。フェルナンドの田島達也さんは、こちらが勝る。シャーベット・アリアの役とはいえルチーアの山崎知子さんはかなり落ちる。ピッポの但馬由香さんもやや魅力に乏しい。
 ということで、総合点でどちらを取るかとなれば、この日のキャスト。それにオーケストラの出来が違うし。まあ、聴き比べはこんなところで、連日で別キャストを聴くのは楽しいものだ。あっ、忘れた。歌わないタイトルロールのかささぎは、前日の飛行のほうが安定しており、この日は舞台袖での着地に失敗という場面もあった(ラジコンで本当に飛んだので、おっ)。

演出はすっきりした感じ。舞台上に置かれた巨大なパネルが凹の字に立ち上がって壁になり、室内と屋外のシーンが切り替わる。人物の登場退場は横にスライドするパネルに乗ってという場面が多い。そこではストップモーションが多用される。今ひとつ意図不明なのが、第二幕での時間の経過。舞台上手の大きな木が枯葉を落としたかと思えば、後の場面では雪が舞う。ドラマの進行には季節が移るような設定はあり得ないのだが、まあ目くじらを立てても仕方ないか。

今年はプッチーニイヤーのはずなんだけど、ロッシーニづいている様相。「どろぼうかささぎ」に始まり、大阪では5月に「ランスへの旅」、秋には大津で「オテロ」、「マオメット・セコンド」という賑やかさ。ロッシーニのために東京遠征しなくていいのが助かる。

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