関西フィル200回定期のワーグナー ~ 最悪の日の救済…
2008/3/28

最悪な一日。朝、仕事で相手方のいい加減さに激怒、こんなことは久しぶり。昼、食事を摂ったお店で、不愉快な出来事にクレーム。晩、電車を乗り換えようとしたら、直前に人身事故で振替輸送の大迂回。その地下鉄はすし詰め、金曜夜のこととて体臭とアルコールの臭いが充満。なんという一日。今週は体調も今ひとつ、気分もすぐれなかった、その止めのよう。
 もしも、このコンサートがなければ、最悪の週末を迎えるところだった。「魂の救済…」とは、なかなかのキャッチコピー、それは、私にとっても。飯守泰次郎と関西フィル、三原剛、緑川まり、皆さんに感謝しなければ。

「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
 「タンホイザー」より『夕星の歌』
 「ローエングリン」より『エルザの夢』
 「ローエングリン」より『エルザの大聖堂への行列』
 「ローエングリン」より『第3幕への前奏曲』
 「ラインの黄金」より『ヴァルハラ城への神々の入場』
 「ワルキューレ」より『ワルキューレの騎行』
 「ワルキューレ」より『ヴォータンの別れと魔の炎の音楽』
 「神々の黄昏」より『ジークフリートの葬送行進曲』
 「神々の黄昏」より『ブリュンヒルデの自己犠牲と終曲』
   指揮:飯守泰次郎
   独唱:緑川まり(ソプラノ)、三原剛(バリトン)

期待以上の出来。この後、同じプログラムで今シーズン2度目の東京公演が予定されている関西フィル、聴きものだ。東京のワーグナーファンはすみだトリフォニーホールへ走れ。

200回記念定期演奏会、常任指揮者飯守さん得意のワーグナーということで、関西フィルにしては珍しく完売、立見こそ出ていないが補助席まで並ぶ。プログラムも特別版で、これまで200回のプログラムも掲載されている。NPO関西フィルの意気込みが伝わってくる。

一曲目の「マイスタージンガー」で熱くなった。私の聴くところ、これが最高の出来かと。正規メンバーと同じぐらいの客演奏者が並び、まさにトラ・トラ・トラ。そのせいか、端々がピシッと合わない感じはある。ただ、こんなに各パートがしっかり響き存在感があるこの前奏曲を聴くことは稀だ。主旋律を繋いで一本の流れを作り、適度に盛り上げて事足れりという演奏を聴き慣れていると、ここまで各声部を際立たせ、それを重ね合わせる面白さを提示されると、うーん、やられたという感じになってしまう。大阪フィルがやれば、もっとブリリアントで厚い響きになると思うが、関西フィルではその対極、人数の割には薄く響き、それが悪い方には作用していない。トゥッティになってもスッキリと、かなりクリアなワーグナーだ。こういうのは嫌いじゃない。

ソリストの二人は10年前ならいざ知らず、あまり期待していなかった。ちょっとこのプログラムでは苦しいのではないかと。二人が前半に歌った曲では、まあこんなものかという感じ。三原さんのヴォルフラムにはもっと深い響きが欲しかったし、緑川さんのエルザもいつも気になる高音の傷みが感じられるのが残念。しかし、オーケストラパートはしっかりサポートしているので、大きな不満はない。

ソリストは当然としても、いつもは飯守さんの前に置かれている譜面台がこの日は無い。あっち向いたりこっち向いたりの指揮ではなく、大体がオーケストラと正対した全方位スタイル、マイスタージンガーで感じた各パートの明瞭さとバランスの良さにも繋がっているのかも。

まさか譜面台の代わりじゃないだろうが、指揮台の客席側に"Supported by DAIKIN"というシールが貼られているのが目障りだ。プログラムにちゃんと書いてあるのだから、それで充分だと思うのに。大阪本社でも大多数の役員は東京駐在という上場企業がほとんどのご時勢に、この会社は例外。しかも業績好調となれば、地域文化のサポーターとして期待されるところ大だが、今や世界のトップメーカーなんだから、陰徳を積む方がCSRの面でも評価されるというもの。

さて後半の「ニーベルンクの指輪」ハイライト、「ジークフリート」からのナンバーこそないが、ストーリーの順番に並べた5曲を聴いていると、人間の頭というのは良くできたもので、勝手に間を繋いでしまう。ライトモチーフの効用かも知れないが、ものすごい省略なのに前の場面と音楽が頭に浮かんでくる。

後半プログラム、充実度ではやはり二つの終曲、ヴォータンとブリュンヒルデのそれぞれの独り舞台が秀逸。舞台上のオーケストラにかき消される部分はあるものの、両人の歌は前半プログラムより格段に上、三原さんのヴォータンはメリハリがあって聴かせたし、緑川さんのブリュンヒルデも終盤スタミナ切れを感じたものの充実の歌唱。飯守/関西フィルとの呼吸も合っている。

2時間たっぷりワーグナーのさわりを聴くと、さすがにおなか一杯という感じ。それでも胃もたれするような演奏じゃなくて、よかった、よかった。次の201回は、関西フィルのもう一人の指揮者、藤岡幸夫氏の「レニングラード」、どうしようか迷っていたコンサートだが、記念公演の充実を感じ、休憩時間にチケットを買ってしまった。

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