大阪センチュリー交響楽団の定期 ~ いよいよ存続の危機
2008/4/14

何とも複雑な気持ち。今シーズンの大阪センチュリーの定期演奏会ラインアップはなかなか魅力的で、今のところ7月まで皆勤の予定、2月にびわ湖ホールのピットにオーケストラが入ったときも予想を上回る好演だった。そこに、橋下ショックが急襲。

予想したとおり、シンフォニーホールの前の公園から署名活動の人が何人も立っている。会場に入ったら専用デスクはあるは、テレビ局の取材クルーがあちこちにいるはという光景で、どこかの来日オペラ初日を元首相が鑑賞するのかと錯覚しそうなほど。おまけに、センチュリーには珍しく、舞台はNHKが収録。もっとも、こちらは演奏を撮るので、存続問題のドタバタ社会ネタじゃないけど。

思い起こせば二年前、関西経済連合会秋山会長の「在阪オーケストラは一つに統合すべし」という発言。あれは、スポンサーなのか否かも曖昧な立場で、ろくに聴きもしないでの無責任発言でしたが、今回の橋下リストラ宣言は当事者の行政責任者が示す基本方針であり、どだい重さが違う。しかも、財政再建プログラム試案発表後の支持率が75%を超えているのだから。

署名活動をする側は、「文化を殺さないで」と言うけれど、ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)や大阪センチュリー(大阪府文化振興財団)がなくなっても、それは大阪の芸術文化の一部に過ぎず、大阪府が財政再建優先で、行政としての優先度の低いもの、民間に任せればよいものへのコミットを減らすというのは、ある意味では当たり前のこと。オーケストラにしても、大阪府が金を出さないと言うなら、署名などではなくカンパを集めるべきではないのか。たくさん名前を書いてもらったら何とかなると思うなら考えが甘すぎる。テレビカメラに顔を向けて事務局が署名を呼びかけているようでは。
 署名活動をするにしても、終演後に小泉和裕音楽監督や首席奏者が舞台衣装のまま出口に立って、聴衆に直接呼びかけるぐらいのことをしなくっちゃ危機感は伝わらない。大阪府が補助金を減らさなくても、母体の財団法人の資産は毎年の赤字で早晩底をつくことが明白なのに、この二年間、いったい何をしていたんだろう。

今回の定期演奏会、音楽以外のことで騒がしいシンフォニーホールだったが、プログラムはブラームスとヒンデミットという、面白い組合せ。曲の長さや重量感から考えると、交響曲「画家マチス」、ピアノ協奏曲第2番の順が適当と思うのだけど、これが慣習というもので、協奏曲を最後に持っていくプログラミングは滅多にお目にかからない。この作品はブラームスが書いた最高の交響曲なのに。

そういう配列のせいでもないだろうが、ブラームスは意外に軽め。伊藤恵さんのピアノは三階バルコニーで聴いていても力強いタッチだが、バックのオーケストラがあっさり系の演奏で、ブラームス特有の音の重なりや厚みが不足、"交響曲"なのに協奏曲として演奏してしまったという感じ。

逆にヒンデミットのほうは、交響曲と言っても、もともとはオペラの音楽(上演を観たことはない)。だから、組曲のようなもので、ブラームスのような構築的で堅固な作品じゃない。やはり演奏順序は逆のほうがいい。しかし、こちらの演奏は堂々たる"交響曲"の体裁で、プログラムビルディングという形が内容を決めるということか。服装が気持ちを変えるということは日常的に経験することだし、それと同じ、やはり形は大事。

次回の定期演奏会には今年から首席客演指揮者となった沼尻竜典氏が登場予定で、タチアナ・ヴァシリエヴァ(チェロ)、浜田理恵、吉田浩之、河野克典というソリストを迎え、ラヴェルの「優雅で感傷的な円舞曲」、デュティユーのチェロ協奏曲「はるかなる遠い国へ」、ドビュッシーのカンタータ「放蕩息子」という大変に凝った内容。もちろん行くことにしている。署名が悪いとは言わないけど、いつも満員の客席がスポンサーへの一番のアピールだろう。

今回の演奏会はホットな話題もあってか、珍しく9割方の動員となっていたが、次回のプログラムだとちょっと苦しいかも知れない。沼尻さんの意欲は感じるんだけど、東京フィルに吸収された新星日響、就任直後に予算削減となるびわ湖ホール、そして大阪センチュリー、この人の行くところ不思議とリストラが付きまとう。妙な巡り合わせだ。

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