大阪フィル2008-2009定期スタート ~ はじめ大雑把、のち
2008/4/21

昨シーズンは大阪フィルの定期演奏会にもご無沙汰気味だったが、新しいシーズンになって復帰、とりあえず上半期のチケットは確保。客演指揮者の顔ぶれも演目も一新となり、この変わり方は驚くほどだ。昨シーズン、大阪フィルの運営やプログラムに苦言を呈したことがあったが、その際の公開質問状には未だ梨のつぶてにしても、まあ、オーケストラのことだから演奏会で答を出してくれればいい。なので、シーズン劈頭、音楽監督が振る定期演奏会は注目。

アルベニス:カタルーニャ狂詩曲
 ラロ:スペイン交響曲
 ラフマニノフ:交響的舞曲
   指揮:大植英次
   ヴァイオリン独奏:長原幸太

今期の定期演奏会は、従来の大阪フィルのレパートリーから逸脱する作品が満載のうえ、各回にテーマ性のあることが特徴。それぞれ欧州各国の地域色を出しており、さしずめ4月はスペイン編。もっともラフマニノフが入っているから、そうとばかりは言えないが。

それで、どんな作品だろうと期待して聴いたカタルーニャ狂詩曲。曲は賑やかだけが取り柄で、演奏としてはあまり褒められたものではない。とにかく大雑把、景気よくアンコールで沸かせるならこれでもいいが、シーズン開始の演奏としては全くいただけない。

こういう曲こそ、オーケストラの技倆の冴え、指揮者の棒さばきの妙で、丹念な彫琢を施して聴かせほしいと思うのだが、馬なりイケイケドンドン風の演奏で、野外コンサートの趣きさえ漂う。ちょっと期待はずれ。

と言うことで、私個人としてはいきなり躓いた演奏会だったが、残りの時間は打って変わった充実ぶり。普段コンサートマスターの席で、ひときわ大きな身振りと運弓でオーケストラをリードする長原幸太さん、ソリストとして立ったときの動きはずいぶん抑制されていて驚くほど。彼が音楽監督の片腕として信頼が厚いのもよく判る。動きだけ見ると大人しく見えるソロヴァイオリンだが、何のなんの、凡庸な客演のソリストなんて目じゃないテクニックと情感、耳タコ的な作品でありながら、彼のソロで聴くスペイン交響曲はとても新鮮。オーケストラも一曲目とは段違いの丁寧さで、楽章が進むにつれて良くなっていく。

そして、休憩後のラフマニノフ、これまた一曲目と同じオーケストラかと思うほどの精度。テンポの緩急も曲想の転換も自在、大変に引き締まった演奏で、ラフマニノフの曲がこんなに立派なものかと思えるほどだ。いったい、どうしちゃったんだろう。これが本来の大植/大阪フィルの実力だと思うと嬉しくなってくる。ひさびさにこのコンビの演奏を聴いたが、まずは一安心か。

プログラムには、平成21年度から大阪府の補助金が打ち切られる云々のお知らせが挟み込まれていて、楽団運営の厳しさを訴えている。ただ、その紙きれ一枚だけ、一週間前の大阪センチュリーの定期のような騒がしい署名活動はない。大人の対応というか、大阪府への依存度合が相対的に低いということか。とは言え、そういう事態になると、今回もお世話になったD席1000円というのも値上げということになりそうだ。

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