ドリアン・ウィルソン/大阪フィル定期 ~ 東は東
2008/5/22

奇妙なプログラムだ。年代も地域もジャンルも、何ら統一的なコンセプトはなく、強いて挙げれば有名作曲家の演奏されることの少ない作品集というところだろうか。ところが、演奏自体は楽しめた。ドリアン・ウィルソンという指揮者、なかなか才人のよう。

メンデルスゾーン:交響曲第1番ハ短調作品11
 バルトーク:ヴィオラ協奏曲
 レスピーギ:バレエ組曲「シバの女王ベルキス」
   指揮:ドリアン・ウィルソン
   ヴィオラ独奏:アントワン・タメスティ

一番面白かったのはバルトークかな。どことなくアジアの臭いがする不思議な曲想、これも民族の血というものか。アントワン・タメスティという若い奏者、地味な楽器にしては華麗さも感じる響き、オーケストラのバックもしっかりしていて馴染みの薄い曲もあってか手抜きは感じられない。指揮者の功績もありそう。

フランス人、タメスティの舞台衣装が素敵だった。シンプルなデザインのブラックスーツ、普通のブラックタイをしているが、襟は開いておらず見えるか見えないかの感じ、上等の生地で仕立てもよく、スマートな体型に見事にマッチしている。言っちゃ悪いが、二日前の原田氏のナニワ金融道ふうの出で立ちとは大違い。あちらも白いアクセントが入った高そうな生地のブラックスーツではあったが…

メンデルスゾーン、溌剌とした曲想で走るが、いかにも若書きという感じもする。もう少し音符を節約した方がいいかなという印象もあるなあ。しかし、屈託のない音楽は、いかにもメンデルスゾーン。陰影はあっても陰がちっとも暗くない。ウィルソンもそんな作品だからか、颯爽としたドライブぶり。

レスピーギ、これはまた大勢の奏者で、ローマ三部作以上の規模ではないかな。オーケストラの色彩の氾濫、音量の炸裂というところ。さすが、リムスキー=コルサコフ仕込み。曲順を入れ替えて、爆演モードとなる曲の連続を避けたのは賢明な対処。もっとも、爆演という感じじゃなくて、節度を持った指揮ぶりと見えた。

それにしても、ここ数年、大阪フィルの音色がずいぶん華麗になったものだ。オールドファンなら朝比奈時代を懐かしむ声も出そう。今回に限らず、2008-2009定期演奏会で採り上げる曲目の多彩さには驚くが、それだけオーケストラの柔軟性や対応力が格段に増したという見方も可能だろう。

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