パスカル・ロフェ/大阪フィル定期 ~ フリキシビリティーの進化
2009/3/12

先月の定期演奏会で、あれだけ深刻なマーラーを奏でた大阪フィルが一転、フランス音楽で「らしい」演奏を聴かせる。もちろん指揮台に立つ人は違うにしても、ずいぶんとオーケストラの柔軟性が増したものだ。昔は何をやっても朝比奈御大の音しか聞こえなかったのに。

ドビュッシー:交響組曲「春」
 デュサパン:「エクステンソ」
 ラヴェル:バレエ音楽「ダフニスとクロエ」
  指揮:パスカル・ロフェ
  合唱:大阪フィルハーモニー合唱団

ドビュッシーの若き日の作品は補筆が入っているとの説もあり、どこまでがこの作曲家の色かは判らないが、ずいぶんとクリアな音で、これがあのぼんやりとたゆたうような後年の作品と同じ人のものかと驚く。演奏だけで言うと、この曲の出来がいちばん佳かった。オーケストラの破綻はないし、各パートの明瞭さと、アンサンブルの精緻さということでも出色。

続くデュサパンの「エクステンソ」もなかなか面白い。ずうっと音が鳴りっぱなしという音楽で、その瞬間瞬間の響きを楽しむという、現代音楽の聴き方さえ心得ておれば問題ない。前半の両曲で示された大阪フィルの合奏能力は素晴らしい。パスカル・ロフェという若い指揮者も悪くない。

ところが後半の「ダフニスとクロエ」はいささか退屈してしまった。バレエ音楽の全曲をやるということは、人形なしの素浄瑠璃を聴くようなもので、それはそれで成立するにしても、十全な姿ではなかろう。やはり組曲版のほうがオーケストラのコンサートにはふさわしいと思う。

大阪フィルも間延びするようなところもあったし、ときに粗さも垣間見える。バレエにしてもオペラにしても舞台があると、場面の推移に紛れて何とも思わなくても、オーケストラだけを聴くと、全曲中の抜いた部分が目立つ。舞台に立つ人間にしてみれば長時間の緊張の持続は困難ということでもあるのだろう。

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