庄司紗矢香が弾くリゲティ ~ これぞ定期演奏会
2009/5/26

これぞ定期演奏会というプログラム。庄司紗矢香が弾くリゲティのヴァイオリン協奏曲、休憩前のピースとは言え、これがメインであることは疑いなし。前にコダーイの「ガランタ舞曲」、後にラフマニノフの第3交響曲というメニューは、オーケストラにとっても大変そうだが新鮮でもあろう。

指揮のヨナス・アルバー氏はなかなかの実力者と見た。いつもの大阪フィルには聴かれない硬質なサウンドで、音のメリハリが効いている。各楽器群の緩みもない。このプログラムだと普段以上の練習が必要だろうから、当然の帰結ということかも知れないが、定期演奏会はこうでなくっちゃ。いつものレパートリーでルーチンの演奏になってしまうと、集客の面でも長期的にはマイナス効果が出てくると思う。関西のオーケストラでは児玉宏さんと大阪シンフォニカーのプログラムが先端を行っているが、大阪フィルにも変化の兆しが見えるのは喜ばしい。欲を言えば、音楽監督こそが率先して取り組むべきことと思うが…

当日配布される大阪フィルのプログラム冊子に、客演ソリストがコメントを寄せたものを見た記憶がない。異例のことである。「自分にとっての今年最大の挑戦」というような庄司さんの言葉が掲載されていた。この大阪フィルに続いて、東京ではNHK交響楽団との同曲での共演が予定されている。したがって、これが一連のリゲティ挑戦の第一夜ということになる。大変な熱演、緊密で厳しい響き、初めて聴く曲だが作曲家の真摯さと、演奏者の共感が充分に伝わる。

奏者の数が少なめで、最初のプログラムからの配置変更ではスタッフが大わらわ。ソリストの前には譜面台を二つ並べて連結、超大型の折りたたみ式の特製の譜面が置かれる。オペラグラスで覗いてみると、第3楽章なんて、オヤジの聴力に挑戦するかのような、五線譜の上に補助線がいっぱい並んだ超高音域の連続。こりゃあ弾くほうも大変だわ。ところが聴くほうの耳には優しいのだから不思議。コンテンポラリーの晦渋さというよりも、感覚的にすうっと受け容れられるような響ですらある。もちろん音響やリズムの特異さはあっても、拒絶反応にはならない。リゲティのヴァイオリン協奏曲、庄司紗矢香というソリストを得て、後世に残る作品になる気がする。

リゲティに比べると前後に置かれた作品のレベルはいまいち。オーケストラの演奏自体は高水準である一方で、作品の脆弱性が顕わになる感がある。まるでパッチワークのようなラフマニノフの第1楽章、緩徐楽章とスケルツォを入れ子にしたような第2楽章、各部分でオーケストラが力演するだけに、かえって木に竹を接ぐような印象が際だつ。なかなかむずかしいものである。

ともあれ、庄司さんのリゲティを聴くだけで値打ちのあるコンサート、東京のファンにはオペラシティに足を運ばれることをお勧め。

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