秋山和慶/大阪フィル定期の英国プログラム ~ 前後、対照的
2009/6/29

ちょっと変わったプログラムである。本来ならオール英国プログラムとしたいところなんだろうが、それじゃ集客に不安ということでハフナー交響曲を入れたという感じ。こういうことがいいのかどうか、定期演奏会なんだから、徹底したほうがとも思うが。ともあれ、久しぶりに聴く秋山さんの棒は、相変わらず若々しく、きびきびとしたモーツァルトは悪くなかったけど。

モーツァルト:交響曲第35番ニ長調「ハフナー」K.385
 ディーリアス:小管弦楽のための二つの小品
 ウォルトン:オラトリオ「ベルシャザールの饗宴」
   指揮:秋山和慶
   バリトン:福島明也
   大阪フィルハーモニー合唱団、九響合唱団

ディーリアスとウォルトンがメインプログラム、それにしても休憩を挟んで配された二人の作品の何と対照的なことか。静と動、鬱と躁か。ディーリアスを鬱と言ってしまうとちと違うかな。静謐という言葉が合っているか。耳慣れたところなら癒し系の音楽。癒されてしまって、心地よく目を閉じてということになると、聴いているやらいないやらで、音楽鑑賞かなんだか分からなくなってしまうのが問題でもある。行儀よくコンサートホールの椅子に腰掛けてというのには相応しくない音楽か。

一方のウォルトン、こちらはコンサートホールでないと無理な音楽。舞台後方はおろか、Pゾーンにも二団体合同のコーラスが配され、オルガン奏者の両サイドには一対のバンダとくれば、相当にやかましい音楽が予想される。コーラスこそないがリヒャルト・シュトラウスの祝典前奏曲ハ長調作品61を連想させる編成である。

旧約聖書に題材を採ったオラトリオということで、バビロニア王ベルシャザールのどんちゃん騒ぎの酒宴と、彼の死による王国の崩壊により捕囚を解かれるユダヤ人というお話。ちっとも親しみを感じる内容ではないが、音楽自体はすこぶる外面的で派手なもので、演奏時間も30分程度と適度、舞台を見ているだけでも面白い。安い席なもので、三階バルコニーの舞台寄り、ちょうどコーラスの横になる。独唱バリトンの背中を見るという、声楽入りの作品を聴くには不適な位置だったが、それなりに楽しめた。福島さんの力任せで雑になりがちの歌は苦手なので、この位置でも問題なし。バルコニーの客用に字幕も用意されていたのは感心。ここで指揮者を正面から見ていると、秋山さんのタクトが曖昧さのかけらもなく明快この上ないのがよく判る。

ウォルトンは前に弦楽四重奏曲を聴いて感心したことがあるが、全く規模の違う作品でも面白く聴ける音楽づくりという点では共通している。いろんなものを持ち込みすぎる嫌いがあるようにも思えて、何度も聴くと飽きが来そうでもあるが、たぶんこれから二度と聴く機会もない曲だろうし、それはどうでもいいことかな。

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