大植英次/大阪フィル定期 ~ 一過性の音楽
2009/7/29

いま鳴っている音は次の瞬間には消える。それが音楽の宿命だけど、なかにはずっと記憶に残る演奏もあし、そのときの響きが脳裏に蘇ることだって、ある。そういうことで言えば、今回の定期演奏会、会場を出て福島駅(JR大阪環状線)に辿りつく頃には、すっかり雲散霧消、そんな音楽だった。

パガニーニ:ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調作品6
 サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調「オルガン付」作品78
  指揮:大植英次
  ヴァイオリン:クリストフ・バラーティ
  オルガン:室住素子

今シーズンの定期演奏会で大植監督が振る4つのプログラム、メインの曲目を並べると、「火の鳥」、「オルガン交響曲」、「カルミラ・ブラーナ」、「アルプス交響曲」というラインアップ。いずれも大編成で派手な演奏効果を伴うもので、すこぶる外面的要素の強い音楽ばかり。挑戦的な演目は客演指揮者に任せ、自身はエンターテインメント指向というのがはっきり見て取れる。

音楽監督というのはいろいろな行き方があるし、アウトリーチの努力やファン層の拡大も立派な仕事で、とやかく言う筋合いではないが、オーケストラを聴くことは、ときに魂の震えるような体験であるかも知れないと信じる人間にとっては、ちょっとベクトルが違ってきているなあと感じるところもある。

悪い演奏じゃなかったと思う。パガニーニのソリストを務めたクリストフ・バラーティはよく歌うヴァイオリンだし、バックのオーケストラ演奏も生気にあふれたものだった。オルガン交響曲にしても、曲自体は傑作だと思わないが、ずいぶんオーケストラのレベルが上がっているのを実感させる演奏。それなのに、聴き終わっても空疎さが残る。音楽に求めるものが違うんだから、こういうことなら、初めから聴きに行かなきゃいいんだなあ。

今回、大植監督の外見がまた変わったのでびっくり。激やせで皺が目立ったのは普通になったが、遠目にもちょっと顔つきが前と違うような感じ、ひょっとしてプチ整形でもしたのかな。そして、髪型はちょっとリーゼント風、襟を立てた燕尾服のデザインも変わっていて何となく応援団風でもある。どういうスタイリストがついているのか知らないが、奇をてらうような感じだし、あまり似合わない。これなら、阪神タイガースの法被とかFCバルセロナのユニフォームのほうがまだいいなあ。

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