フルシャ/大阪フィル定期 ~ 超絶技巧を聴く
2009/9/18

前日の余韻と疲れが残っていて、地元のオーケストラのコンサートに行くのは億劫なところだが、チケットまとめ買いしていたので仕方ない。そんなときに掘り出し物に遭遇することもあるし。

音楽監督の回でないから、空席の目立つ客席、プログラムも馴染みの薄いものだし、指揮者もソリストも聞いたことがない名前だ。指揮者はずいぶん若そうである。写真と実物とのあまりの違いにびっくりというのは女性の場合に多いが、この指揮者は本当に若かった。30そこそこ、あるいは20代ではなかろうか。

スーク:組曲「おとぎ話」作品16
 アルチュニアン:トランペット協奏曲変イ長調
 ドヴォルザーク:交響曲第7番ニ短調作品70
   指揮:ヤクブ・フルシャ
   トランペット:マティアス・ヘフス

お国もののスークとドヴォルザーク、それらに挟まれたのがアルメニアの現代作曲家のコンチェルト、結論から言えば、これが一番面白かった。

トランペットのマティアス・ヘフス、上手いのは当たり前にしても、とても柔らかい音色が出せる人だ。この楽器のイメージが変わるような音である。通して演奏される三楽章、約15分の短い協奏曲だが、音色の多彩さ、リズムの面白さ、オーケストラパートも聴き応えがある。もちろんソロの華麗さと言ったらない。終結部に置かれたカデンツァの光彩陸離たるパフォーマンス、これは人気曲になっても不思議じゃない。そして、「ホラスタッカート」のオマケ付きの大サービスである。

前後の作品は曲自体が傑作未満ということがよく判る演奏だった。良くも悪くも、小細工なしに、あるがままに素直に音楽を進める人だ。スークの作品はゆったりと響くメロディの美しさで、癒し系の趣き。エネルギッシュな終曲では、あっけらかんとオーケストラを鳴らす。大阪フィルをしっかりドライブしているから、才能のありそうな人だ。

同じようなことはドヴォルザークにも言えて、外連味と言うほどのことはないが、しっかりオーケストラを鳴らす。いささか鳴り響く部分が多くて、そのフォルテの連発に最後は飽きてきてしまうのが問題だけど…

この曲、ブラームスの影響を強く受けていることがはっきり聴き取れる。ブラームスのシンフォニーとそっくりのリズムが随所に出てくるのはご愛敬である。もっとも、師匠ほど丹精込めて書き込んだ訳ではないので、厚い響きの各音にそれなりの必然性が感じられるブラームスに対し、こちらは音符が多すぎるのではないかと思えてしまう。ブラームスの影響下から個性が羽ばたく直前といった趣きの交響曲だ。亜流というには捨てがたいし、傑作というには個性が不足するという、微妙な位置にある作品ではないかな。以前にコンサートで一度だけ聴いて、つまらなかった印象がある曲だ。今回はもう少し集中して聴いたら、やたらブラームスが聞こえたので、前に聴いたのと同じとはにわかに信じがたいものがある。ヤクブ・フルシャ、若々しくて颯爽とした音楽の進み具合で、ほとんど退屈しなかったせいかも知れない。

東京でオペラ、大阪でシンフォニーと、連日。そろそろ朝晩は涼しくなってきたし、音楽シーズンに突入かな。

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