飯守泰次郎/関西フィル定期/マーラー「復活」 ~ NPOの強みか
2010/2/19

創立40周年、この一年、関西フィルの定期が面白い。思わず年会員になってしまった。そしてその第1弾がこの日のマーラーである。二月、在阪オーケストラの重量級演目が続く。台所事情はいずこも苦しい中で頑張っていると思う。その最右翼は関西フィルだろう。もともと公的支援があるわけでもなく、最近になってやっと危機感に目覚めた団体とはひと味違う。

一番目に付くのがここの事務局はお客のほうを向いているということだろう。当たり前のことだが、これが実はそうでもなくて、大阪の商売人かと思うことが他ではいくらもある。京都ならオーナーの鶴の一声で芸術文化にポンとカネが出せる大企業の名前はいくつも思い浮かぶが、情けないことに大阪にはそれがない。大阪が本社でも社長以下役員のほとんどは東京という企業が増えている。そんな中、ボードメンバーの大半が大阪というのは珍しい部類、しかもオーナー企業の色合いもあるダイキン工業を掴まえたのは事務局の慧眼、大ヒットではないかな。だからこういう企画も可能になる。

マーラー:交響曲第2番ハ短調「復活」
  指揮:飯守泰次郎
  ソプラノ:垣花洋子
  メゾ・ソプラノ:福原寿美枝
  合唱:大阪アカデミー合唱団、関西二期会合唱団

友の会会員証を窓口に提示して座席券と引き替えるというシステム、渡されたチケットはA席ということだが、2階バルコニーのプロセニアム寄り、声楽入りのプログラムには不適な位置である。女声コーラスのメンバーとは3mも離れていないし、パーカッションも目の前だ。なんだか、飯守さんのタクトで歌わないといけないような気になってしまう。

そんな位置なので、指揮者はとてもよく見える。こういう振り方をするとこういう音楽になるのかというのが手に取るようにわかる。特に前半の楽章では特徴がはっきり現れていた。四角くて、ゴツゴツしているのである。レガートを排した演奏を求めている指揮ではないかな。オーケストラもそういう反応をする。なだらかなカーブを描くメロディラインではなく、一音一音を無骨なまでに鳴らしていくという感じである。肌触りはいいとは言えない。どちらかと言えば遅め、マーラー特有のテンポの揺れはこの演奏では大きくない。オーケストラにしても初めて取り上げる曲、しっかり棒について行くのは当然の成り行きだけど、ちょっと第一楽章、第二楽章は肩が凝った。演奏するほうがずっと大変だろうが、聴くほうも力を抜くところがないのは疲れるものだ。

第三楽章スケルツォになってようやくリラックスした雰囲気になる。肩が凝ってはスケルツォにならないから、当たり前のことだけど。アルト独唱が入る第四楽章「原光」、ここで歌った福原寿美枝さんはとても良い。私の席からだと背中しか見えないというハンディキャップがあるのだが、ホールを満たす深い声である。この位置なのにと驚く。

第一楽章終了時の5分間休憩はスコアの指示を無視して僅かのポーズしかない。反面、後半3楽章はアタッカのはずなのに、終楽章の前で休止したのは解せない。少なくとも必要なタメの範囲を超えた隙間があった。

コーラスの年齢層は高い、若い人が少し混じっているのが関西二期会の合唱団のよう、彼らだけ楽譜を持っていたのでそうかと思う。飯守さんは口を開けて歌詞を示すと同時にコーラスの入りもキューを出すので大忙しである。コーラスが入る楽章後半だけでなく、前半から大層な盛り上がりで、ここが全曲のクライマックスなので当然としても、欲を言えば、第一楽章の充実度がもう一段あればというところ。ここらあたり、オーケストラの厚みということでは大阪フィルには一歩譲る。逆に筋肉質という見方もできなくもない。

完売公演、当日販売の立見も出そうな気配だったが、なんとか座席に収まった模様。これからとりあえず一年間、パスするつもりの公演もあるが、楽しめそうなラインアップである。

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