音楽堂バロック・オペラ「アーサー王」 ~ 文化祭シーズンはとうに過ぎ
2010/2/28

こんなレアものオペラなのに実演を聴くのが二度目とは、我ながら呆れる。前回は二年ほど前、びわ湖ホール声楽アンサンブルの公演で、そのときは演奏会形式。ナンバーの間のお話を字幕で表示というスタイル、あまりオペラを聴いているという感じがしなかった。

それで、今回の公演、ニケという人、色々と面白いことをやっているらしく、この作品のDVDも出ているとのことだが未聴、びっくりするような舞台を期待しつつ横浜へ。

アナ・マリア・ラビン(ソプラノ)
 シャンタル・サントン=ジェフェリー(ソプラノ)
 マーク・キャラハン(バリトン)
 アーウィン・エイロス(カウンター・テナー)
 ジョアン・フェルナンデス(バス)
 管弦楽・合唱:ル・コンセール・スピリテュエル
 指揮:エルヴェ・ニケ
 演出:伊藤隆浩

それが、終わってみれば、演出家に盛大なブーイング、もっともである。何を言いたいのかさっぱりわからない。舞台上の左右に小舞台を設け、そこにソリスト、コーラス、バレエなどを載せる趣向だが、それはともかく、問題なのは舞台後方のスクリーン、ここに画像やら字幕やらが順次映し出されるが、思いつきの羅列で、センスもなければ、浅薄なこと甚だしい。歌詞を出すならまだしも、説明書きを英語で出してどうするつもり。ご丁寧にそのはるか上段には日本語。客の99%は日本人だろう。繰り出す画像もストーリーとの関連があるわけでもなし、暗喩のつもりらしいが自己満足の域を一歩も出ない。これはまるで高校の文化祭、いやいや、そんな言い方をすると才能ある若者に失礼あたる。ひどいのには、「????」なんてのがあったが、それはこっちの台詞じゃないかとの声も。同じ人が前にここで「バヤゼット」にも関わっていたが、そのときは何もしていなくてまともだったのに…

せっかくの活き活きとした演奏なのに、あのスクリーンの酷さが思いっきり足を引っ張っている。見たくもないので目をつぶったら、春節で賑わう中華街でお昼に美味しいものをいっぱい食べたせいで、ところどころ意識が飛んでしまう。これには困った。いや、そのほうが良かったのだ。一緒に聴いた人によれば、私が見逃したくだらない画像は山ほどあったようだし。

何かあるのではと期待したものの、公演そのものはびわ湖ホールのときと同じ。演劇部分は無し、音楽のナンバーのみ、休憩なしで2時間もかからない。チリの地震で津波警報が出て、京浜東北線がちょうど開演時刻の前にストップ。30分遅れの開演となったものの、帰りの新幹線を1時間遅い便に変更したのに、結果的にその必要は全くなかった。予定よりも1時間早い便に悠々間に合ったのだから。そういう点では肩すかしである。ああ、そうか、休憩を挟むと、騒ぎで後半が開始できなくなるという心配があったのかな。

コーラス、器楽、その素晴らしさは特筆もの、ソリストは悪くないにしても瞠目というレベルでもない。やはり、この作品、オペラや芝居を観るようにはいかないんだろう。きちんとした形が残っていない。それなら、パーセルの音楽だけでドラマなんて考えず、びわ湖ホールのスタイルでやってくれたら、演奏の印象ももっと違ったものになったのに残念だ。余計なものにカネをかけなければ、チケットも少しは安くできたろうに。

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