藤岡幸夫/伊藤裕/関西フィル定期 ~ 予定どおり、75分
2010/4/29

昭和の日、もとはみどりの日、さらに天皇誕生日、この日の藤岡幸夫指揮の関西フィル定期演奏会は恒例のようだ。前にレニングラード交響曲を聴いたことがあるように、いつも大曲を取りあげる。関西フィルの編成だと客演奏者を入れないと無理なことで、この演奏会はNTTドコモが協賛でお金を出している。指揮台の客席側にはきっちりロゴが入っているし、西濱事務局長と藤岡さんのプレトークでも、そのことに触れる。曰く、「本日はNTTドコモさんのおかげで可能になったプログラムで…」、「僕も携帯はドコモです!」とまあ二人とも商売人である。開演前には、一曲目に出がないメンバーなのだろうか、「いらっしゃいませ」とステージ衣装でホール入口でお出迎え、このオーケストラは経営努力が目に見える。昨年度はどこのホールも客足が落ちたのだが、GW突入のこの日、前売は完売、補助席、立見まで出る大盛況である。結果、今世紀に入ってのシンフォニーホール最多入場記録となったらしい。

チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲作品33
 マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調
  指揮:藤岡幸夫
  チェロ:伊東裕

2008年日本音楽コンクール第1位とかの伊東裕クン、奈良の高校3年生、うちの坊主と同じではないか!ぼちぼち受験勉強という暢気さなのに、こちらはプロオーケストラの定期演奏会に登場ということだから、大変なものだ。と、妙なところに感心して、チャイコフスキーを聴く。

とても素直で伸びやかなチェロだと思う。パワーに溢れるというのではないが、何の苦もなく弾いているという感じ。献呈された初演者が改変を施したものを全て消した1876年原典版とのことで、技術を誇示したり効果を追求したりするような部分がオリジナルに戻されたということだろうか、それが伊東クンの演奏の印象にも繋がっているのかも。

休憩時間、ホワイエでは3月定期の払い戻しが行われている。私は辞退を申し出たので案内は来なかったが、ちゃっかりキャッシュバックを受けている人もいる。まあ、それは個人の考え方の問題だ。事務局のおねえさんの姿を認め、尋ねる。
「終演時間は何時になりますかね?」
「休憩が3:45か3:50までなので、それでいくと5:00ぐらいになります」
「大植さんみたいだと新幹線に乗り遅れるけど、大丈夫かな…」
「リハーサルは普通のテンポでしたから75分ほどでした」

連休の谷間に東京出張、コンサートの後に間に合う列車のつもりが、マーラーの第5交響曲では語りぐさの超スロー演奏を聴いているので念のために確認。そして、3:50開始で終わったのが5:05、ちょうど75分だ。無事、新大阪17:37ののぞみに乗車。

それで演奏、第3楽章スケルツォに力点を置いたのが明らか。この長いスケルツォが全曲の中心という認識で、しっかり仕上げたことが窺える。この楽章だけ、ホルンの首席が一人上手に移動して演奏するのは珍しいこと、何度も聴いている曲だけど普通はどうしているんだろう。視覚的にも楽しめる。

続くアダージェットと、シンフォニーの真ん中部分が良くて、前後は今ひとつ物足りないという感じ。第1楽章・第2楽章ではマーラーらしい一瞬の曲調の変化をもっと強調したほうが面白いのに、さあっと流れる印象がある。指揮者、オーケストラともに初めて取り組む作品のようなので、そこまでの自在さがないのだろう。補強しているとはいえ、弦の厚みは物足りないところも。終楽章となるとずいぶん粗くなってしまった感があるが、エンディングのクライマックスの後は盛大な歓声と拍手、ゆっくり出来ない私は、盛り上がりの中をそそくさと会場を後にする。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system