フルシャ/大阪フィルのマーラー ~ それぞれに客演の理由?
2010/6/24

シンフォニーホールから戻ったらイタリア・スロバキア戦で、つい観てしまった。ほんとうは早寝して3時に起きるつもりが予定外。まあ、金曜日は休日出勤の代替で休みにしているから問題ない。それにしてもル・ブルーの体たらくに続くアズーリの敗退、青は験が悪いかと思ったら、見事な勝ちっぷり。試合後に中田英寿も言っていたが、こんな試合が観たかった。本田(摂津市出身)、遠藤(ガンバ大阪)、岡崎(宝塚市出身)、岡田(大阪市出身)と、ご当地ゆかりの人が揃って活躍だから、大阪名物道頓堀ダイブが出たらしい。決勝トーナメントで勝てば、またカーネルおじさんが危ない。

記念の年の作曲家を二人並べた安易なプログラムという印象がある。ショパンとマーラーなんて水と油だ。前半だけ、後半だけでいいと思う人も多いだろう。半額ならなおいいのだけど。

ショパン:ピアノ協奏曲第1番ホ短調作品11
 マーラー:交響曲第1番ニ長調「巨人」
  指揮:ヤクブ・フルシャ
  ピアノ:中村紘子

この演奏会、後半プログラムは大変によかった。前半のソリストの酷さが際だっていたせいもあるが、前年に続いて定期演奏会に客演したヤクブ・フルシャはなかなかの才能だ。昨年のドヴォルザークでの颯爽とした音楽の運びは印象的だった。その2か月後に客演したクリストフ・アーバンスキの素晴らしさで霞んでしまった感があるが、今回のマーラーではその能力を遺憾なく発揮というところだろう。

これまでに聴いたマーラーの第1交響曲で、これほど各パートの細部まで聞こえる演奏には出会ったことがない。全く響きが混濁しないし、数多い副主題やちょっとしたパッセージ、ただの繋ぎのフレーズにも目配りがされており、それらが適切なバランスで鳴らされている。主旋律ではないところでも個々の奏者が受け持ち箇所を精一杯演奏しているのが見て取れる。テンポの動かし方は細かく、指示は明快である。細部を浮き出させていながらも、音楽の流れが阻害されることはない。2年連続の客演に至ったのにはオーケストラの支持もあったのかも知れない。できれば、ソリスト抜きのプログラムで聴きたかった。

諸般の事情があったのだろうが、ソリストの選択は極めて疑問。休憩時間、1階の無料のコインロッカーにペットボトルを取りに行ったとき、横の扉の脇に立つ係員がいて、おばさま連中が何人か奥に消えていった。あれは楽屋に通じているのだろうか。だとすれば、あの方々は同年配の親衛隊なのかも。なんとも不思議な雰囲気の人たちだった。

かつての天才少女、著名なピアニストだが、初めて聴いて、「えっ、こんなの!」と驚きである。音は大きいがデリカシーが全くない。指が回らないのか、細かな音符が続くところはテンポが落ちるだけでなく、小節の強弱のリズム感が怪しくなる。まさか中村流ルバートということでもなかろう。私のような素人の耳にもこの状態だ。デビュー50年の全国ツアーが予定されているらしいが、それを機に演奏活動に終止符を打ったらどうかしら。夫君の元作家よりも文才に優れた人だけに、評論活動のほうが似合っているのではないだろうか。

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