沼尻竜典/日本センチュリー交響楽団のマーラー第4番 ~ こりゃ大ハズレ
2011/5/26
行かなきゃよかったと思ったコンサートは久しぶりだ。最近はオペラがなくてオーケストラばかり、大阪の楽団の定期演奏会が続いているが、いちおう選んでいるつもりなのに、とうとうババを掴んでしまったという感じだなあ。
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第4番ニ長調K.218「軍隊」
マーラー:交響曲第4番ト長調
ヴァイオリン:フォルクハルト・シュトイデ
ソプラノ:角田祐子
指揮:沼尻竜典
急げば間に合ったかも知れないが、モーツァルトはパスして後半のマーラーだけを聴いた。没後100年、関西でもそれなりにマーラーは取り上げられるが、1、3、4、5、大地の歌といった定番のシンフォニーばかりで記念の年にしては寂しい。どこのオーケストラの財政事情も苦しいから、多数のエキストラを入れてリハーサルも充分に時間をかけないといけない曲は避けることになるのだろう。かくして同じシンフォニーばかり聴くことになってしまう。
かなり遅めのテンポで開始した第1楽章、嫌な予感がする。音楽が流れていかない。各楽想がブツブツと切れた状態で並べられていく。ゆったりと進むのは悪いことではないが程度問題、いらちの大阪人には我慢できないところがある。マーラー特有の緩急の変化も大きくないのでメリハリに欠ける。いちばん癇に障るのは経過句の短いフレーズとも言えない音を意味なく強調すること。何を考えているんだろう。こんなギクシャクした音楽をマーラーは書いている、どう、ヘンでしょう、イカれているんじゃないと言いたげのような。それが沼尻さんの解釈ということか。
この第1楽章でドッと疲れが出た。何のカタルシスもないマーラー、ちっとも楽しくない。第2楽章、第3楽章は比較的平穏に過ぎて一安心したら、第4楽章でまたも。
若いソプラノ、角田祐子さんは海外で活躍している人のよう。どんな歌だろうと期待したが、あまり快調とは言えない。リリカルな声はこの交響曲のソリストだから当然にしても、その声の裏側にゆとりがほしい。残念ながら、彼女の場合は幅広さを感じさせるところがない。最後のセクションになってようやく調子が出てきたようにみえたが、オーケストラに乗りきれないのは指揮者の問題でもある。最近はずいぶんオペラも振っているのに、この人はときとして歌手を置き去りにすることがある。まあ、これはシンフォニーだから指揮者主導なんだろうけど。
沼尻さんという人はつかみどころがない。良いと思えるときと、悪いときとの落差が激しい。どこか宇宙人的だなあ。