エリシュカ/大阪フィルの「我が祖国」 ~ 期待が大きすぎて
2011/10/5

ラドミル・エリシュカが大阪フィルを振ったグラゴール・ミサがあまりに素晴らしかったので、今シーズンの再客演が発表されたとき、もう一人の待望の再客演のクシュシュトフ・ウルバンスキとともに大きな期待を抱いた。それで、格安の当日シニア割引という手もあったが、真っ先に購入したのがこのチケットだ。ところが蓋を開けてみたら客席の入りはせいぜい7割、これなら1000円で聴けたことになる。演奏のほうも私の期待が大きすぎたのか、いまひとつ、やや肩すかし気味のところがあった。

スメタナ:交響詩「我が祖国」
 指揮:ラドミル・エリシュカ
 管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

悪い演奏ではない。この人の音楽は若々しい。80歳というのに指揮台に立つ姿は矍鑠としたものだし血色もよい。歳と音楽の関係なんて端の人間の勝手な思い込みに過ぎないことを実感する。同年輩のアルベルト・ゼッダと同じく、しばしば来日して得意のレパートリーを披露してくれるのは有り難いことだ。きっと、今さら放射線がどうのこうのなんて気にしてはいないのだと思う。

前半の3曲に比べて休憩後の後半3曲が私にすれば期待はずれ。同じ素材が延々と繰り返されるような印象があり、ニュアンスに乏しい。すこぶる元気はいいのだが、騒々しさと単調さを感じてしまった。作品自体のもともとの出来映えのせいなのか、大阪フィルのプレイヤーたちの問題なのか判然としない。オーケストラは充分に鳴っているし、いつもの定期演奏会よりも気が入った演奏であるのは確かだが。

第2曲の「モルダウ」は数多く聴いていても、全曲通して聴くのは恥ずかしながら私は初めてである。「モルダウ」はシンプルなオーケストレーションでありながら、絶大な効果のある曲だと思うが、これがあまりにも傑作であるが故の「我が祖国」の不幸なんだろうか。この作品を通して演奏するのはボヘミアゆかりの指揮者にほぼ限られるのも判る気がする。

エリシュカ、数少ない巨匠と呼べる指揮者だし、お国もの以外のレパートリーも是非聴いてみたい。

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