モーフィン・クァルテット ~ グランプリコンサート2012
2012/11/13

三年に一度開かれる大阪国際室内楽コンクールのフェスタ部門の一般審査員をした関係でのご招待となった。主催する日本室内楽振興財団の機関誌に頼まれて寄稿したこともあったので、そちらのご招待も重なったが、体はひとつ、カミサンも都合が悪いというので一人でいずみホールへ。この団体は管楽アンサンブル部門の優勝者なので、コンクールでは聴いていない。

グラナドス:「スペイン舞曲」より(オリエンタル、
    メヌエット、アンダルシア、アラベスク)
 グリーグ:組曲「ホルベアの時代から」
 グラズノフ:サクソフォン四重奏曲
 棚田文則:ミステリアス・モーニングⅡ 第1楽章
 ヴァイル:タンゴ(「三文オペラ」より)
 リゲティ:6つのバガテル
 ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
 メンデルスゾーン:カプリチョ
 ガイス:パッチワーク
   モーフィン・クァルテット
   クリストフ・グレズ:ソプラノ・サックス
   エディ・ロペズ:アルト・サックス
   アントニー・マルクン-アンリオン:テナー・サックス
   マティオ・ドラズ:バリトン・サックス

北は札幌から南は熊本まで、ほぼ一日置きに全国10箇所でのコンサートが予定されている。ただコンクールをやるだけじゃない、こういうフォローがあってこそだが、ここまで面倒見のよいその姿勢は立派だ。彼らも日本の秋(ところにより冬)を堪能することだろう。

サクソフォーンのために書かれた曲はグラズノフ、棚田と最後のガイスだけ、あとは編曲されたもので、やはり聴いていてその違いの大きさを感じる。

グラナドスとグリーグは編曲ものだが対照的だ。前者が個々のパートのソロを際だたせるのに対して、後者は響きを重ねるアプローチだ。もともとの曲がそうなのか、アレンジャーのセンスなのか判然としないが、前者は色彩感が前面に出る曲想だからこうなるのも当然か。サキソフォーン4本、声部は違っても音色は近似するから普段聴き慣れないこともあり戸惑う。その点、グラズノフになるとサキソフォーンのために書かれているだけにずっと自然だ。棚田作品は日本ツアーだから取り上げたということもあろうが、それでなくても個性的で面白い曲だ。

ヴァイルの三文オペラからのナンバーはジャズの薫りが横溢という感じで、オリジナルではないにせよこの楽器がピタッとはまる。リゲティに至っては技巧の限りを尽くすという趣き、ドビュッシー、メンデルスゾーンを経て、これまたとっても可笑しいガイスで締める。曲の間に短いコメントを交えつつ、アクションもあって飽きさせない。なかなかのエンターティナーぶりだ。

いずみホールでは全て招待ということだが、安いとはいえ有料の余所ではどれだけ客が入るんだろう。3つの部門の優勝者が毎年全国を回り、各会場では恒例のものとしてそれなりに定着しているのかも知れない。そんなに数多くはない室内楽コンクールの優勝者だけに、水準は保証付きでもあることだし。

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