セーゲルスタム/大阪フィルの北欧プロ ~ サンタもびっくり
2013/2/7

2か月もコンサートから遠ざかったのは近年にないことだ。第9シーズンはいつも空白になるけど、年明けまで引きずった感じ。もっとも、その間にMETライブビューイングでヴェルディの2作品を観たから全くのご無沙汰ではないせよ、あれは生の音楽とは言えないし。

グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調作品16
 セーゲルスタム:Seven Questions to Infinity
 セーゲルスタム:交響曲第248番《日本初演》
 シベリウス:交響曲第5番変ホ長調
  ピアノ:小山実稚恵
  指揮:レイフ・セーゲルスタム
  管弦楽:大阪フィルハーモニー交響楽団

今年初のコンサートは交響曲248番という冗談みたいな番号の曲を含む大阪フィルの定期演奏会だ。寒い時期だからこそ北欧の音楽ということかな。

当日空席ありのときに発売されるシニア・学生券、1000円チケットを求める人の列がずいぶん長い。裏を返せばそれだけ売れ残っているということか。あんなに並んでいたのに渡されたPゾーンの席から眺めるとかなり空席がある。

まるでファルスタッフ、お腹に足がついてノロノロと歩いてくるといった感じがこの日の指揮者でも作曲家でもあるセーゲルスタム氏、長い白髪と顎髭はサンタクロースと言ったほうがいいかも。それならいっそ衣装も赤にしたらどうだろう。ウエストサイズは小山さんの5倍ぐらいありそうだ。これだけの体重を支える足は悲鳴をあげそう。それもあってか、指揮台には椅子が置かれている。

グリーグのコンチェルト、小山さんのピアノはとてもよくオーケストラに馴染む。目立つところはくっきりと、溶け合うところはオーケストラの一員のようにフレーズを歌う。技巧をひけらかすようなところは微塵もなくて、音楽の流れを途切れさせることがない。この人の人柄の良さがそのまま表れたような演奏で、聴いていて安息感があるのだ。

普通なら休憩前に置かれるコンチェルトが冒頭というのは奇妙だなと思ったら、小山さんのアンコール曲で謎が解けた。セーゲルスタム作曲のピアノ曲で次の自作交響曲の演奏に橋渡しするという仕掛けだった。なるほど。この短いピアノ曲は鍵盤の右から左へ滑り落ちるような長いフレーズが何度か繰り返されるというもの。グリーグの冒頭とも親近感のありそうなピースだ。作曲家は第2ヴァイオリンの後ほうの空いたプルトに腰掛けて聴いていた。

そして、問題の第248交響曲、舞台の上手下手それぞれにピアノとハープというシンメトリカルな配置で作曲家は下手のピアノを受け持つ。舞台中央には小山さんが弾いたピアノが蓋を閉じられたまま残る。指揮台は空っぽだ。セーゲルスタムは指揮者なしの交響曲を多く書いているらしい。大編成のオーケストラはパーカッションがずらっと並び、サンダーマシンに鞭、ハンマーに至ってはマーラーも裸足で逃げ出すほどの連打だ。Pゾーンから眺める楽譜は2~3枚ほどなのに、30分もたせるのは繰り返しかアドリブか。パートの首席が音頭をとって受け渡ししているようだし、タイマーを置いていたりする。その仕組みはよく判らない。東京でも読売日響で第252番の交響曲を披露したそうだが、聴いた人のコメントでは同じような配置でやはりハンマーの連打だったとか。同じ趣向の曲なのか。しかし、これだけ書いていると自分の曲でもどれがどれだか判らなくなるのではないかな。ほとんど消耗品のような感じ、再演ということも期待できないだろう。昔の作曲家が自作の転用を繰り返していたことをふと思い浮かべる。

休憩後のシベリウス、第5交響曲は何度聴いても捉えどころのない作品だ。楽想は木に竹を接いだようなところが多いし、統一感もいまひとつ。この前の抑制され凝縮された第4交響曲が大傑作なのにと、いつも思う。正直なところ未だかつて感銘を受けたことがない。今回、引き締まった演奏だとは思うが、作品の真価を認識したかというとそうでもない。

腰掛けたままのセーゲルスタム氏の指揮ぶりはかなりアバウトな感じで、オーケストラに対する細かな指示は全くと言っていいほどない(Pゾーンだからよく見える)。シベリウスに対する思い入れは伝わってくるのだけど、うーん、やっぱりよく判らない曲だ。

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