ウルバンスキ/大阪フィル「春の祭典」 ~ いま生まれる音楽!
2013/12/5

京都で働きだしてから仕事帰りにシンフォニーホールということが激減した。一方で最近完売続きという京都市交響楽団の定期演奏会は週末、これではオーケストラの演奏会から足が遠のくのは仕方がない。それでも、聴き逃せないのは大阪フィルの12月定期演奏会、明日は大事な仕事があるんだけど。

ペンデレツキ:広島の犠牲への哀歌
 モーツァルト:ピアノ協奏曲第18番変ロ長調K.456
 ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
  ピアノ:フセイン・セルメット
  指揮:クシシュトフ・ウルバンスキ

開演直前に窓口に着いたが、しっかり1000円券が残っていた。席は最前列で良くないが文句は言えない。4月からの新シーズンはフェスティバルホールに移る。この学生・シニア券は継続されるのだろうか。2日間で2000人もキャパシティが拡大するわけだから、安いチケットもさることながら、集客が気になる。

最前列のかぶりつき、目の前に第1ヴァイオリンの後ろのほうのプルトに座る奏者の足がある。音響的にはバランスもへったくれもない位置なのにいちおうA席だ。ペンデレツキの奇妙な楽譜も覗くことができる。
 ページの半分ぐらいを写真か絵か判らないもので占める。ふつうの音符が書かれている風でもないし、幾何学模様のようなページもある。いったいどうやって演奏するんだ。ヴァイオリン群にしても一人ひとりが別々の音を出しているみたい。さらに不思議なのは指揮するウルバンスキが暗譜、私の乏しい音楽知識では理解の埒外にあることは明らか。それでもちゃんと合奏になっているのが摩訶不思議、曲想の転換もきっちり揃う。こうなると何が何だか。この曲、タイトルが広島だけど、それは後付けのもののよう。悲嘆の雰囲気が横溢ということなんだろう。あれよあれよのトーンクラスター10分間だった。

モーツァルトのコンチェルトを弾くフセイン・セルメット、ふつうのサイドベンツのビジネススーツのような出で立ち、風貌も芸術家というよりサラリーマンのよう。伴奏のウルバンスキは珍しく譜面台を置いている。オーケストラだけの部分はハッとするほど優しく柔らかい音がするところがあってオッと思うのだが、コンチェルト全体としてはどうなんだろう。私にはピンとこない演奏に終わったように思える。せっかく彼が指揮台に立つのだから、合せものでないほうが良かったのに。

「春の祭典」は圧巻だった。ピエール・モントゥーが初演した頃は演奏困難と言われたほどの曲が今ではアマチュアオーケストラも取り上げる。しかし、変拍子や強烈なダイナミズムを、今まさに奇矯な音楽が生まれるように演奏されるのを滅多に聴かない。この日のウルバンスキと大阪フィルの演奏は、その稀有なケースだろう。角がとれて丸くなって、拍子も適当に合わせやすくしたりという感じがする演奏とは一線を画する響きだ。こんなに面白い音楽だったのか。瞬間と移ろい、どこを取っても聴かせる。この人、東京交響楽団のポストに就いたから今後も頻繁に来日することになるだろう。そのときには大阪まで足を伸ばしてほしい。大阪フィルでの初客演、ショスタコーヴィチの第10交響曲に仰天したとき、事務局はさっさと唾を付けておけばよかったのにと悔やまれる。

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