井上道義/PACオーケストラ定期 ~ ピカソ?ピカソ!
2014/2/23

公演のチラシ

大阪、京都、西宮、久々に三日連続で劇場・ホール通いということに。「ピカソと音楽」、どういう意味かさっぱり分からないまま出かけたPACの定期演奏会、井上さんのことだから何かひとひねりあると思っていたら、やっぱり。オール・ピカソはなんだかこじつけの感もあるが、いちおう画家ゆかりの何とかの繋がりはあるみたい。

サティ:バレエ音楽「パラード」
 R.シュトラウス:交響詩「ドン・キホーテ」
 ビゼー:劇音楽「アルルの女」第1組曲・第2組曲
 チェロ独奏:堤剛
 ヴィオラ独奏:ダニール・グリシン
 指揮:井上道義
 管弦楽:兵庫芸術文化センター管弦楽団

開演前、舞台の上にはヘンな楽器、いや楽器とは言えないようなものが並んでいる。ワインの瓶らしきものが十数本ぶら下がっているのは音程があるんだろうか。下手のほうには水槽のようなものも。あれはどうするつもりなんだろう。オーソドックスなオーケストラ編成では有り得ない、抽選のガラガラ、ピストル、タイプライター、サイレン…

これがピカソが美術・衣装を担当したというバレエ・リュスの作品だということ。20分弱の面白い音楽だ。比較的ゆったりとしたテンポで音楽が進み、エキゾチックと言っていいのか、珍妙な楽器が鳴り響く。水槽ではレインコートを着た打楽器奏者が手を突っ込んでパチャパチャと水音を立てる。上手の打楽器奏者はヘルメットを被ってサイレンを回す。どうもそっちのほうに気を取られて、音楽はとても短く感じたと言うわけ。

こんな編成だから、次の「ドン・キホーテ」の前にはオーケストラのレイアウト替えがある。早速マイクを握った井上さんが「ヘンな曲で始まりましたが…」と、場つなぎのトーク、この人はよくこれをやる。プレトークよりもずっとファンサービスだ。休憩なしで客席に座ったまま舞台上の椅子の移動をただ眺めていても詰まらないし。

シュトラウスの曲が始まっても舞台上にソリストの姿はない。長い序奏が終わって狭い弦楽器の間をチェロを捧げ持って堤さんが登場する。結構なお歳だし、ちょっと危険な演出のようにも思えるが、座って弾き出す響きは力強く、まだまだ現役。定期演奏会にチェリストが客演するときは判で押したようにドボルザークでは飽き飽きするし、こういう選曲は有り難い。変奏もさることながら、終曲の美しさ、堤さんのソロも特筆ものだ。ここの部分だけを聴いても値打ちがある。

休憩を挟んで「アルルの女」、定期演奏会ではまず取り上げられない曲だろう。私が初めて買ったLPレコードが確か、これ。ユージン・オーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団だった。ジャケットの蠱惑的な美女のプロフィールをいまでも覚えている。

全8曲、ほとんどポーズを置かず、一気呵成にファランドールのクライマックスに持っていく。前奏曲の弦から前のめりでメリハリを効かせた演奏で、アンサンブルの乱れも意に介さずという感じがある。休憩前の「ドン・キホーテ」とはずいぶん趣きが違う。あちらは精妙さに、こちらは勢いに、まるっきりアプローチを異にする。楽しんで音楽をやっている様子がありあり。この人は妙な衒いが抜けていい感じになってきた。そしていきなりアンコールの「エスパーニャ・カーニ」(パスカル・マルキーナ・ナロ)、スパニッシュ炸裂。奏者から手渡された真っ赤な花をくわえて指揮台で井上さんは踊り出す。そしてこの一輪は客席最前列の少女に恭しく進呈。こういうことを嫌味なくできる人はあまりいない。この調子で大阪フィルにも元気を注入してほしいもの。

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