下野竜也/京都市交響楽団 ~ 連続記録、途絶えるか
2014/4/25

京都で働いているのに地元の京都市交響楽団の演奏会に行っていないのは、定期演奏会の日程が週末に組まれていることが多いせいだろう。最近はずいぶんと客の入りが良くて、完売続きらしい。以前の空いた客席を思うにつけ、何が変わったんだろうと気になるものだ。広上さんの人気があるのか、それともプログラムや客演者に魅力があるのか、もちろん演奏水準が向上しているというのがベースだとは思うが。

開演の少し前に客席に着くとプレトークの最中、定期演奏会の連続完売記録がどうとか下野さんが言っていたから、私の隣も空いているし、P席側から見渡して隙間もあるし記録更新ならずかと思ったら、京響のブログによれば「定期演奏会の連続完売記録も、あわや今回でストップか?!と思われましたが、みごと開演前に完売となりました!」とある。確かに当日券売場に列ができていた。いずれにせよご同慶の至り。

ドヴォルザーク:序曲三部作「自然と人生と愛」
  序曲「自然の王国で」op.91
  序曲「謝肉祭」op.92
  序曲「オセロ」op.93
 マルティヌー:オーボエ協奏曲
 ヤナーチェク:シンフォニエッタ
   オーボエ:セリーヌ・モワネ
   管弦楽:京都市交響楽団
   指揮:下野竜也

あまりポピュラーとは言えないプログラムだ。児玉宏さんほどではないが、マニアックということでは人後に落ちない下野竜也さんの京響常任客演指揮者就任披露演奏会、やはり一捻りしている。

ドヴォルザークの三つの序曲はそれぞれに聴いたことがあったが、これが連作ものとはついぞ知らなかった。各タイトルに通底するものなど何もなさそうなのに。ところが三つの曲には共通のモチーフが用いられており、続けて聴くと、「ああ、なるほど」というところがある。
 この三部作の演奏は生気に溢れている。下野さんの発散するパワーが伝わっているのか。京響のイメージは大人しいものだったのに、いつの間にこんなに元気なオーケストラになったのか。

マルティヌーのオーボエ協奏曲は短かめの佳曲、セリーヌ・モワネさんのソロも見事なもの。上手なのは言うまでもないにしても、オーボエのイメージよりもけっこう重めの音が出るなあと感じる。長身の美人というのは前日に聴いたエルトマンと共通する。クラシック音楽の世界でもビジュアル面に優れた人が多くなった。もちろん、そっちばかりじゃ困るけど。この点では恵まれたとは言いにくい下野さんが、あちこちで引っ張りダコなのは、実力を認められている証明ということかも。

ただ、最後のヤナーチェクは私にはどうもピンとこない演奏だった。騒々しさが耳につくというか、落ち着きのない感じで、あまり買えない。元気がいいのと紙一重というところなのかなあ。

小編成のマルティヌーと大編成のヤナーチェクの間に休憩を設けるのが妥当と思うのに、後半にコンチェルトが置かれているのは、前と後ろの時間のバランスだろう。井上道義さんなら配置転換の場つなぎトークをやるところだ。この時間は客席にいて退屈な時間、野球場でもマスコットキャラクターがバク転するぐらいなのだから、オーケストラも斬新な発想で有効活用を考えたらいい。METライブビューイングのインターミッション・トークは結構面白い。京響は開演前のプレトークに加え、終演後にオープンなレセプションを実施しているようで、大変よい試みだと思う。これは演奏者と聴衆の距離を縮める。このあたりに連続完売の秘密があったりして…

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