デュメイ/関西フィルの変奏曲プログラム
2014/11/21

オーギュスタン・デュメイの関西フィルの音楽監督就任はこちらでは大きなニュースだった。それから4年も経つのに私はただの一度も聴きに行っていない。彼が取り上げるのが主に独墺系の古典作品、足が向かなかったというのが実態で、今回の変わったプログラムにようやく腰を上げることに。ブラームスのハイドン・ヴァリエーションは大好きな曲だし。

公演のちらし  チャイコフスキー:奇想的小品 作品62
 チャイコフスキー:感傷的なワルツ 作品51-6
  (デイヴィッド・ワルター編曲)
 チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲 作品33
 ラヴェル:「マ・メール・ロワ」組曲
 ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲 作品56a
  独奏:堤剛(チェロ)
  管弦楽:関西フィルハーモニー管弦楽団
  指揮:オーギュスタン・デュメイ
  いずみホール

安いほうの席を買ったものだから、B列中央やや下手よりという最前列になった(A列は販売していないようだ)。堤剛さんとの距離は5mぐらいのものか。チェロの指使いからボウイングは目の前だし、鼻息はおろかピアニシモの持続音の途切れまで聞こえる。オーケストラ全体のバランスなんて望むべくもない位置だが、チェロのソロを堪能するには最高の席かも。とにかく近いぶん音が大きい。

チャイコフスキーの1曲目と3曲目がチェロ独奏の入る曲だ。と言ってもコンチェルトじゃないので、独奏チェロが休むことはほとんどなく、オーケストラだけの部分は皆無に近い。そうなるとコンチェルトで掛け合いがどうのこうのとかじゃなく、ただチェロを堪能するだけというのも何だかなあという感じ。贅沢を言っても仕方ない。堤さんのチェロは相変わらず力強く美しい。

デュメイは身長2m近いから指揮台は無し。それでも台に乗った堤さんを見おろす上背なのがおかしい。ただ、歩く姿や指揮ぶりなど、もてあますほどの身長のせいかボディバランスは悪そうだ。視覚的にはいまひとつかなあ。

休憩を挟んだ後半のプログラムはずっと重くなる。ラヴェルの「マ・メール・ロワ」組曲がこの日一番の出来だろう。別にデュメイのお国ものだからということではないが、各曲の性格の違いを丁寧に描き出していく。関西フィルにこんな繊細な表現力があったのかとちょっと意外。

そして一転ブラームスに。前後半の最後に変奏曲を置くというのがこの日のプログラムのツボ、「ハイドンの主題による変奏曲」ならコンサートの最後でも充分だ。私はコンサートで聴いたことはないので、通常はどうなのか分からないのだけど、各変奏の切れ目にポーズを置いたのに驚く。シンフォニーの楽章間と同じような扱いだ。変奏の一つ一つを丁寧にというのは分かるにしても、第1~第8変奏と性格の異なる楽想の移り変わりを経てフィナーレに向かうこの曲はやはり続けて演奏してほしいものだ。途中に不規則なポーズが入るのは感興を削ぐのではなかろうか。もっとも、ウェブ上で検索した楽譜には各変奏の終わりに複縦線の上にフェルマータがあったから、これは確かに終止記号なんだけど…

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