ヴァンスカ/読売日響の大阪定期 〜 さすが得意のシベリウス
2015/11/21

読売日本交響楽団の大阪定期演奏会は年に3度ある。在阪オーケストラにしてみれば、東京から攻めてこられて大変なことだが、こちらとしては東京に行かなくても聴けるのはありがたい。それに、けっこうメジャーな指揮者が得意の曲を振るというのも魅力だ。いまやシベリウスにかけては第一人者とも言えるオスモ・ヴァンスカなので、この人を聴いたことのない私はYahoo!オークションでチケットを確保、額面以下なので文句なし。

公演のチラシ

シベリウス:交響詩「フィンランディア」作品26
 ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
 シベリウス:交響曲第2番ニ長調 作品43

 指揮:オスモ・ヴァンスカ
  ピアノ:リーズ・ドゥ・ラ・サール

私としてはシベリウスの交響曲は第4番がいちばん面白いし、作品としても傑作だと思うが、やはり人気ではこの第2番ということになるだろう。第4番のつかみどころのない動機の重なりと不思議な音響はとても魅力的で、その萌芽は既にこの第2番にもある。
 主要な主題を提示するにも単一の楽器でメロディラインを作ることはシベリウスには少ない。断片をつなぎ合わせたパッチワークのようでいて、それが流れとして全体として、この作曲家ならではのトーンが出来てしまう。その過程を克明に見せるようなヴァンスカの指揮であり、読売日響の演奏だ。

指揮者ヴァンスカ、各パート各奏者の受け持つフレーズ個々が意味があり重要であることを、実際の音として再現する手腕、これはただ者ではない。間の取り方も含めリハーサルで充分な指示が行われていることが想像できる。お国ものだからいいなんて単純なことではなく、この指揮者のスコアリーディング能力や伝達力あってのことではないだろうか。

アンコールの「悲しきワルツ」も素敵だった。曲想の遷移、フレーズ毎の彩、これはなかなか聴けない類の演奏だ。それに比べると、プログラム冒頭の「フィンランディア」は悪くはないけど普通の演奏だった。この曲だと、あまり手を尽くす余地がないのだろうか。

休憩前にはラフマニノフのピアノコンチェルト、いい演奏には違いないが、私はあまり興味を持てない曲だ。どうしてもソリストを入れてということなら、シベリウスのヴァイオリン協奏曲にして、オール・シベリウス・プロにしてほしかった。

とてもいいコンサートだったのに、残念なことが一つあった。私が気にしすぎなのかも知れないけど、それは場内アナウンスの違和感だ。若い女性の声で、文節ごとに終わりの音が伸びて間が空く、その文節の抑揚は同じように繰り返される。「本日はぁ、ご来場ぉ、有り難うぅ、ございましたぁー」のように、まるで小学生の校内放送かと錯覚する。これはコンサートホールには似つかわしくない。
 たぶん本人は何も分かっていないだろうし、それは大人の話し方じゃないと誰も指摘・指導する人がいないのだろう。「朝日放送ザ・シンフォニーホール」の名が泣きそうだ。プロはいくらも身近にいるはずなのに。このホールにしばらく行かないうちに、こんなことになっているとは。この件は休憩時間にホールの人に伝えたが、今度行くとき改善されておればいいが…

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