関西二期会「ウィンザーの陽気な女房たち」 〜 面白さも中くらい
2015/11/28

友だちが行けなくなって頂戴したチケットで尼崎へ。アルカイックホールは先月「高校生のためのオペラ鑑賞教室」で来たばかりだ。
 早めに会場に着いたら、顔見知りとばったり。日本センチュリー交響楽団の関係の方、今日のピットはセンチュリーだったのか。色々とお話しすると、名称が大阪から日本に変わって以来、地方公演も増え公演内容もだいぶ変わっているらしい。
 最近では豊中市市民ホールの指定管理者になるという展開も。豊中では来年度に文化芸術センターが新たにオープンするらしい。一方で吹田のメイシアターは改修のため長期休館とか。北大阪の音楽地図もだいぶ変わりそうだ。
 京都市交響楽団は前からやっているが、センチュリーでも映画を生オーケストラでという企画があるようだ。伊福部昭没後10年で「ゴジラ」全曲演奏上演というのは、きっとお客を呼べそうだ。

それで、今日のオペラ、この演目で客が入るかどうかの懸念もあったようだが、関西二期会関係者の思い入れが強く上演に至ったらしい。チケットが高かったので私はパスしたが、先日カレッジオペラハウスで大阪音楽大学創立100周年記念で上演された「ファルスタッフ」と同じお話が踵を接することになる。演出はどちらも岩田達宗さん、聞けば装置の使い回しなどでコスト抑制も図っているとか。それなら、いっそ共同企画として相乗効果を狙ったらいいのになあ。

公演のチラシ

ファルスタッフ:片桐直樹
 フルート氏:西尾岳史
 ライヒ氏:小玉晃
 フェントン:二塚直紀
 シュペールリヒ:藤田大輔
 カーユス博士:内山建人
 フルート夫人:木澤佐江子
 ライヒ夫人:西村薫
 アンナ・ライヒ:周防彩子
 管弦楽:日本センチュリー交響楽団
 指揮:十束尚宏
 演出:岩田達宗
 あましんアルカイックホール

このオペラは前に一度観ている。4年前、びわ湖ホール声楽アンサンブルのメンバーによる公演だった。そのときは歌も台詞もドイツ語、今日は台詞部分は日本語だったので、こちらが自然で正解だと思う。
 ただ、三幕で3時間近いというのはいかにも長い。これはこれで面白いのだが、ヴェルディのようにスピーディに約2時間で済ませるほうがいいのにと思ってしまう。ファルスタッフが懲らしめられるのが2回じゃなく3回なので、どうしてもそうなってしまうのかも。

このオペラはファルスタッフが主役じゃなくて、女房たち、分けてもフルート夫人が中心だ。木澤佐江子さんは最近アダルジーザ(「ノルマ」)を歌っているので、メゾ領域までカバーする音域の人なのか。このフルート夫人は大変立派な歌だし、演技も自然で好ましい。ライヒ夫人の西村薫さんとの声のコントラストもいい。この二人がしっかりしていると、ストーリーの展開が活き活きとしてくる。加えて、片桐直樹さんのファルスタッフも芸達者で、核となる登場人物がきちんと揃うと長さはあまり感じずに楽しめる。

恋人たちを演じた二人、フェントンの二塚直紀さんとアンナの周防彩子さん、この二人はそれぞれに違和感があった。二塚さんはびわ湖ホールの公演ではシュペールリヒの役を歌っていた。この人の成長ぶりは目覚ましい。この日初めて知ったが、来年の飯守泰次郎指揮による関西フィル定期演奏会ではトリスタンを歌うことになっている。以前、ミーメの歌唱で瞠目した記憶があるが、とうとうトリスタンか。それで行くと、このフェントン役はヘンな言い方だが声が立派になりすぎて合わない。逆に周防彩子さんのアンナは少し弱い。きれいな声できちんとした歌なのだが、強さと輝きに欠けるところがある。ウェルディのナンネッタよりも、このオペラのアンナはずっと芯の強いキャラクターではないかと思うだけに。

それでピットのことだが、いまひとつ元気がないのはどうしてだろう。なんだかテンポがずっと緩い感じで、どうも溌剌さがないので喜劇の愉悦が生じない。指揮者の責任なんだろうか。舞台を盛り上げるに至らなかったのがちょっと残念だ。

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