金沢でミンコフスキ/OEKを聴く 〜 シューマンの交響曲第1番・第2番
2015/12/10

12月10日は冬の青春18きっぷ利用期間の開始日だ。今回は忘れずに買った赤きっぷで早速出かける。ちょうど金沢で、マルク・ミンコフスキがオーケストラ・アンサンブル金沢の首席客演指揮者就任記念として、シューマンの交響曲ツィクルスをやるタイミングとぴったりだ。我ながらよくまあという気もしなくはないが、平日にもかかわらず、東京から駆けつけた人の顔もあったから、おおご同輩というところか。

公演のチラシ

とは言っても私はミンコフスキを聴いたことがない。世評は夙に高いのを知っているが、やはり自分の耳で確かめないと。どちらかというと、好きでもないシューマンのシンフォニーだけど、そんな曲のほうが指揮者の力量が判るというものだ。

シューマン:交響曲第1番「春」変ロ長調op38
 シューマン:交響曲第2番ハ長調op61
 (アンコール)
 シューマン:交響曲第4番ニ短調op120より第2楽章

第1番を聴いていて、これは予定を変更して金沢にもう一泊しようかなという気持ちが湧いてきた。でも、第2番を聴いて、やっぱり予定どおり明日は奈良に戻ろうということになった。それが評価といえば評価かな。

第1番はとっても面白かった。シューマンの交響曲なんて、この世に存在しなくても何ら痛痒はないとさえ考えていたが、この演奏は全くもってスリリング、こういう曲なら聴くに値すると評価が一変するほどだ。
 やたらに重たく輪郭がぼやけた感じのスローな序奏で、あれれと感じたのは最初だけ、後から思うと、たぶん意図的にそうしていた気がする。 その後のテンポや表情の変化は、四つの楽章を通して息をもつかせぬほどだ。小編成のオーケストラなのに、大交響曲をやっているようなダイナミズムを実現している。ひと言で言えばキレのいい演奏ということか。なるほど、何年か前の来日で大騒ぎしていたのが判る。

第2番は誰がやっても面白くない。何故こんな(偏見かも知れないが)駄作を好んで取り上げる指揮者が多いのか、私にはいつまで経っても理解できない。それでミンコフスキがその固定観念を打ち砕いたかとなると、それは叶わず。やはり私にとって、依然として避けて通りたい曲のままだ。
 この頃に顕著になった精神疾患の影響なのか、この曲には創作力の低迷が感じられてならない。楽譜の隙間を埋めるためだけに書いたような無意味なフレーズやパッセージがやたら多くて、聴いていて煩わしくなる。音が多いから充実したオーケストレーションかというと、そうでもない。私の鑑賞力では付いていけないし楽しめない。この歳になって何も無理をして聴くこともないというのが、正直なところ。交響曲第2番はピアノ協奏曲と同じ年に作曲されているらしい。私が出来れば避けて通りたい曲が並んでいるというのも偶然かなあ。

定期演奏会なのにアンコールがあった。確かにシューマンの交響曲ふたつだと20分の休憩を挟んでも1時間半で終わる。朝比奈隆氏の晩年の演奏会はそういうパターンが多かったけど、ミンコフスキはまだ若い。拍手に応えて客席に向かって「Andante from Symphony No.4、明日も聴きに来てください!」ということで、予告編が演奏された。

いくら著名演奏家とはいえ、木曜日と金曜日、19:00からのコンサートでシューマンとなると、1560席を埋めるのは苦しいだろう。私が座った3階席はほとんど空っぽに近かった。週末にすれば遠方からの聴衆も見込めるけれど、やはり北陸3県の地元に根ざしたオーケストラを目指しているのだろう。それは悪いことではない。もっとも、コンサート終了後に21:00のかがやき518号に飛び乗れば、その日のうちに戻れるほど金沢は東京に近くなっている。その時刻だと、大阪はおろか、京都だって無理なのに…

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