大阪交響楽団のワーグナー父子プログラム
2016/2/24

1月に続いて大阪交響楽団の2月定期演奏会に行く。このオーケストラの売りは何と言ってもユニークなプログラム、その張本人と言ってもいい音楽監督・首席指揮者、児玉宏さんの最後の演奏会になる。もうやめちゃうのか、とても残念。

これで、びっくりするようなプログラムが今後聴けなくなるかと思うと一抹の淋しさがある。今度は何をやらかすか、期待半分、揶揄半分でチケットを求めるのはとても楽しいものだった。最後に持ってきたのは、何と、この楽団の倍ほどの人数が要るプログラムだ。

ジークフリート・ワーグナー :交響詩「憧れ」
 リヒャルト・ワーグナー :楽劇「ニーベルングの指環」抜粋(児玉宏編)

普段にない入りだ。ワーグナーになると必ずやって来る人たちがいるので、予想どおりとも言えるが、音楽監督最後の公演ということもあるのだろう。東京の評論家の顔も何人か目にする。関西フィルの事務局の人の姿もあったから、大勢エキストラ で入っていたんだろう。あちらは飯守さんとワーグナーを何度もやっているし。

当然のことながらメインは「指輪」の抜粋、児玉宏さんが何年かかけて纏めたもののようで、前に準・メルクル指揮で大阪フィルが定期演奏会で取り上げたものとは構成がかなり違うようだ。

作品の時系列を崩さず聴きどころを繋いでいくということについては同様でも、大阪フィルでは著名ナンバーを並べた感があったのに、児玉版では丹念に色々な部分を拾って繋いでいるという感じがする。そういう点では流れがいいし、ブツ切りという感じがしない。工夫の跡が明らかだ。
 ワルキューレの騎行はどうしても独立色が強くなってしまうが、同様の傾向になりそうなジークフリートの葬送行進曲は全体から浮いておらず、うまくピックアップしていると思う。

したがって、後半になるほど音楽の流れが滞ることなく進むので、オーケストラ渾身の…と言っていいぐらいの盛り上がりになる。これはなかなかの聴きものだ。来シーズン、びわ湖ホールで「指輪」のチクルスが始まるが、あの人ではなく、この人にピットに入ってほしいぐらいだ。風邪がすっきりしない状態だったけど、毒をもって毒を制すではないが、少し体調もよくなった気がする。

プログラム冒頭に置かれたジークフリートの曲。なんだかチャイコフスキーを思わせるような木管楽器の明瞭な主題提示と、その後の情緒的な盛りあげかた、コーダで主題がほとんどそのまま回帰するあたり、いつの時代の作品なのかなという感じも。その主題もメインプログラムの初めと終わりに現れるテーマとの近似性を感じたりして、やっぱり父子ということなのか。

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