京都の秋音楽祭開会記念コンサート 〜 下野竜也のマーラー
2016/9/18

京都の秋音楽祭は今年20周年とのことだが、これまで一度も来たことがない。今年のプログラムを眺めると、京都市交響楽団が3回の定期演奏会とこの開会記念コンサートがあってレジデントのような感じなのは当然としても、なかなか充実したラインアップだ。どうせならロームシアター京都の公演も合わせて、行政が音頭をとってパブリシティに努めればいいのにとは思うのだが、そうもいかない事情があるのだろうか。ともあれ、オープニングということで、着物がトレードマークの門川市長がオーケストラ後方の下手で挨拶を終えるやいなや、下野さんが指揮棒を振り下ろす。これはなかなかいいタイミングだ。

すぎやまこういち:序奏 MIYAKO(委嘱作品・初演)
 シューマン:ヴァイオリン協奏曲ニ短調
 マーラー:交響曲第1番ニ長調
 ヴァイオリン独奏:三浦文彰
 管弦楽:京都市交響楽団
 指揮:下野竜也

委嘱料をどれだけ払っているのか知る由もないが、序奏MIYAKOはごく短い曲だ。アニメ、ポップス、ゲームなどで著名な作曲家を起用して話題性を狙ったのだろうが、曲想はありきたりで何ら新鮮味がない。かなりの高齢のはずで、初演なのに客席に作曲家の姿はなかったようだ。

続くシューマンのヴァイオリン協奏曲、もともとこのジャンルに関心が薄い私は、そんな作品があることすら知らなかった。作曲家の死後も長らく封印されていたようで、初演が1937年とのこと。最近ではレコーディングも増えているようだが、もちろん聴いたこともない。ソロは三浦文彰さんという若いヴァイオリニスト。
 やはり、私はコンチェルトもシューマンも苦手だ。お昼にお酒を飲んだということもあるけど集中力が続かない。生誕200年の年にオーケストラの定期演奏会に行くと、判で押したようにシューマンのピアノコンチェルトということがあったが、あの年に聴いていないのが不思議だ。作品的には取り上げる価値がないという評価だったのだろうか。実際、聴いてみてちっとも面白くない。といっても、途中から眠気を催してしまったので、しっかり聴いたとは言えず、シューマンにも演奏者にも申し訳ないことをしたかな。

休憩後のマーラー、これはとっても面白かった。京都市交響楽団の演奏水準がここまでレベルアップしているのは驚きだ。今は間違いなく関西一だろう。定期演奏会が盛況だから演奏が良くなるのか、演奏がいいからチケットが完売となるのか、そのあたりは微妙だが、かつて感じた線の細さはもはやない。

舞台上手の3階バルコニー最前列で聴いていると、視覚的にも楽しめる。マーラーがオーケストラのダイナミクスや音色に異様な拘りを持って書いているんだなあと、今さらながら思う。舞台裏やミュート付きのブラスの音の漸増や、木管楽器のここ一番のベルアップ、何種類ものシンバルの使い分け等々。これは見ていて楽しい。

下野さんの指揮は明晰で、ところどころでは思いきり外連に近いものを利かせる。それがマーラーの場合は作曲家の意向みたいに思えるのが面白い。第1楽章のクラリネットの郭公をやけに大きな音にしたり、中間の楽章では粘りを含んで旋律を歌わせたり、両端楽章のフルオーケストラの炸裂が半端じゃなかったりと、思いっきりやりましたという感じが爽快ですらある。それでいて崩れたという印象がないのは、この人の才能だろう。会場の盛り上がりも大変なもの。

定期演奏会じゃないので、アンコールがある。私の位置からだと譜面が覗けるので先に曲目が判る。へえ、こんなのをやるんだと思っていたら、下野さんが客席に向かって来場御礼の挨拶、そして、「今日は何曜日でしょうか。日曜ですね。夜8時、今日は京都市交響楽団で演奏します」とか。すると、舞台下手からソリストが登場するではないか。そうか、このヴァイオリニスト三浦文彰さんは、あれを弾いている人か。服部隆之「真田丸のメインテーマ」。そういえば、NHKの昼の番組でソロで弾いているのを見たことがある。コンチェルトのあと、アンコールがなかったのは、こういうことだったのか。

でも、この曲、アンコールピースとしてはなかなかのものだ。冒頭の委嘱作品より遙かに出来映えがいい。隣に座ったおばあちゃん3人組も含め、来場者の1/4、400人は公募無料招待の京都市民なので、シューマンよりもマーラーよりも、きっとこっちのほうが親しみやすかったはず。あのドラマもそろそろ和歌山、大阪に舞台が移るころだ。

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