アラン・ブリバエフ/日本センチュリー定期 〜 久々にいいコンサート
2018/3/16

いいコンサートだった。小山実稚恵さんのピアノが素敵だった。だいたい退屈して意識が飛ぶことの多いコンチェルトで寝なかったのは珍しい。そして、あの指揮者、アラン・ブリバエフ、初めて聴いたのだが、これは凄い。風貌はやくみつる似のカザフ出身で、なんだか笑えるのだけど。

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18
 ボロディン:交響詩「中央アジアの草原にて」
 ショスタコーヴィチ:交響曲第9番変ホ長調作品70
  ピアノ:小山実稚恵
  指揮:アラン・ブリバエフ

ラフマニノフのコンチェルトはコンサートの定番のようなもので、何度も聴かされている(これを目当てに出かけたことはない)のに、この日の演奏はちょっと違った。厚ぼったく濃厚な味付けになりがちな曲が清新に耳に届く。どうしてだろう。贅肉を落としてすっきりとしたプロポーションに蘇ったかのよう。小山さんのピアノの魅力なのか、ブリバエフ指揮の日本センチュリーとの相乗効果なのか、なんだ、とてもいい曲じゃないかと思ってしまう。

ポピュラー小品の定番中の定番「中央アジアの草原にて」、これは指揮者のお国ものということになるのだろうか。そんなことはどうでもいい。強弱、テンポのニュアンス、まさに堂々たる作品と聞こえる。私はこの曲を演奏会で聴くのは初めてだと思うが、こんなふうになるのか。
 そして、圧巻はプログラム最後のショスタコーヴィチ、軽いはずの(と思っていた)第9交響曲が大傑作だと認識させる見事な演奏だ。第1楽章、ソロ奏者の出来が素晴らしい。そんなにリハーサルに長時間をとったはずもないのに、楽器の受け渡しがスムースで繋がりがピタッと決まる爽快さ。続けて演奏される第3〜5楽章の構成は、この演奏を聴くと、そうあるべき必然性が感じられる。凄まじい狂騒のなかの終結、指揮棒もなく素手の動きだけでコントロールする技はただ者ではない。譜面台にスコアが置かれていて、それを捲りながらこれだから、この人、指揮者の意図を伝達する能力は並外れている。

それでコンサートが終了するのが定期演奏会では普通だが、アンコールがあった 。チャイコフスキーの弦楽セレナーデのワルツ楽章。これがまたゾクゾクするような演奏だった。アンコールということもあり、テンポの緩急、音の膨らませ方萎め方、思いっきりメリハリをきかせた弦のドライブだ。それでいて下品にならず、この音楽が本来持つ生命力を噴出させるような、まさに聴きものの、とってもありがたいオマケだった。

定期演奏会が二日公演になったせいもあるのだろうが、シンフォニーホールの客席はさびしい。ひいき目に見て六分、実際には半分程度の入りではなかったろうか。こんなにいいコンサートなのに惜しいことだ。しかし、拍手の大きさは満席の会場に匹敵するほどだった。儀礼的なものでもなんでもないのは、音を聞いているだけで判ること。

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