ニューヨークシティオペラ「トスカ」 〜 初めてのリンカーンセンター
New York 1987/9/11

8月にニューヨークに赴任、翌年3月までの短期勤務だが、ちょうどオペラやコンサートのシーズンと重なっているのは幸運だ。もちろん仕事もあるが、オフタイムの楽しみが予想できるというのは、この上ないモチベーションとなる。

本命のメトロポリタンオペラは9月がシーズン開幕だが、その前からニューヨークシティオペラが始まっている。システムはMETと同じようにスタジオーネ方式 とレパートリー方式の折衷パターン、このシーズンはプッチーニ作品の特集のようで、ずらりと並んでいる。どこでも掛かる演目だけでなく、「つばめ」なんて日本では未上演のものもラインアップされているのは楽しみだ。

そして、海外で観る最初のオペラは「トスカ」となる。どこでもやっている演目というのも何だけど、知らないより知ってるほうがいいかも。

シティオペラはMETへの登竜門という場合もあるが、それはごく一部の歌手に言えることで 、総じて言えばローカルな歌劇場だから、観ていて、聴いていて、耳目を捉えるという歌い手は少ないようだ。この馴染んだ演目に初めての馬蹄形劇場で接していて、さほど感慨が湧かないのも、そんなところに原因があるような気がする。

しかし、まあ、隣に名だたる大劇場があるにもかかわらず、連日の公演が成り立つというのは驚きだ。それなりの経営努力が払われているのだろう。METにはない英語字幕が付くというのもその一つか。真偽のほどは判らないが、METの音楽監督のジェームズ・レヴァインが否定的だとかで、METでは字幕の導入が見送られている。日本では当たり前のサービスが、海外ではそうでもないのだ。アメリカ人がイタリア語やドイツ語に決して堪能とは思えないのに。

ここではリンカーンセンターの各劇場やコンサートホールの共通仕様であるLincoln Center stagebillという冊子が無料で配布される。当日のキャスト変更を知らせるタイプ打ちした色紙が挟み込まれている。有料プログラムなんてのはなさそうだ。立見2ドルというのは破格、タダ同然。広くて明るい雰囲気のバーコーナーでの飲み物代と同等だ。季節の関係もあるのだろうけど、観客の装いもラフで、ジーパンにTシャツなんて人も多い。METと違ってあくまでもカジュアル、気楽にオペラを楽しんでほしいという感じ。なかなか好感が持てるなあ。

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