ニューヨークシティオペラ「トラヴィアータ」 〜 A Soprano's Odyssey
New York 1987/9/12

シティオペラで歌っていた歌手が、隣のMETの舞台にステップアップするのはサクセスストーリーだ。プラシド・ドミンゴもそうだった。そして、この日のヴィオレッタであるマリリン・ミムズの場合は、順番は同じでも事情は少し違うようだ。ニューヨークタイムスの記事では、Odysseyという言い方をしている。

ミシシッピ出身の彼女はMETのオーディションのファイナルを音声障害のために欠場を余儀なくされたものの、捲土重来、翌年の覇者となりMETへの切符を掴んだとか。今シーズンに予定されている「こうもり」のロザリンデ役でのデビューが既に決まっている。その先駆けとしてシティオペラのヴィオレッタということだ。シティオペラでの雌伏からMETの檜舞台ということとではない。

METでの「こうもり」も観ることになるが、その前に記事にもあるヴィオレッタだ。さすがにMETでこの役でデビューという訳にはいかないだろう。ロザリンデとヴィオレッタじゃ役の重さが違う。笑劇のヒロインとしての軽い歌と、感情にしても歌唱技術にしても大変な振幅があるプリマドンナでは同列に論ずることなどできない。

全米でのオーディションを勝ち抜いて来ただけに、若くて勢いのあるのは当然にしても、これからどう精進していくかが大事なんだろう。ヴィオレッタの各幕での表現の深化が課題かなあ。観る者、聴く者の魂を揺さぶる域にはずいぶん距離があるのも事実、まあ、デビューほやほやの新進だから暖かく見守ることも必要か。しかし、ニューヨークは厳しい競争社会だけど。

(追記)
 Wikipediaの記述によれば、彼女のキャリアは病気にのためずいぶん短いものになったようだ。不運なソプラノだったというか、それでも檜舞台に立てたのだから良しとすべきなのか。

Marilyn Mims is an American operatic soprano who had an active career during the 1980s and 1990s. A regular performer at the Metropolitan Opera from 1988 to 1992, her singing career was cut short after being diagnosed with endometriosis in 1995.

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