ニューヨークシティオペラ「ボエーム」 〜 いきなり三連荘
New York 1987/9/13

ニューヨークに来て、こちらの生活にも少し慣れた。そして動き出したらもう止まらないオペラの蟲、ニューヨークシティオペラに日参状態となる。三日連続だ。この日は「ボエーム」。ロドルフォ役にリチャード・リーチの名前が見える。この人はMETへの階段を上る途上にある人だろう。ニューヨークシティオペラにデビューしたのも「ボエーム」だから、ロドルフォは因縁の役ということか。1984年ということだから3年前だ。
 そんな目でみるわけでもないが、やはり、この人が目立つ。他のキャストが悪いわけでもなく、このオペラに相応しい若い歌い手たちで、雰囲気は出るのだがこの作品を堪能する処まではいかない。今シーズンのMETではカルロス・クライバーが指揮台に立つ予定で、早々に何本かのオペラのセットチケットを押さえているので、それに期待かな。

この日のキャスト、ミミ役のフランシス・ギンズバーグはミズーリ州セントルイス出身、ムゼッタのシェリル・ウッズはオハイオ出身、ロドルフォのリーチはニューヨーク出身、マルチェッロのケネス・ショウはジョージア州アトランタ出身と、全米各地から才能がニューヨークに集まっていることが知れる。日本で東京に集中するようなものか。彼らがキャリアを積んできたオペラハウスもニューヨークに限らず全米に広がっている。サンタフェ、ヒューストン、ダラス、ピッツバーグ、シンシナティ、シラキューズ、メンフィス、インディアナポリス…
 ドナルド・キーンさんが「日本では、アメリカのオペラはメトロポリタンオペラだけだと思われている」と嘆いていたのを読んだことがあるが、アメリカに来てみてわかる裾野の広さだ。Opera Newsには全米各都市でのオペラ公演情報を集めたページや個別広告が載っている。それも単発じゃなくて、数演目にしてもいちおうシーズンがあるのだから大したものだ。しかも定番の演目だけではなく珍しい作品も取り上げられているのが立派。なかなかアメリカのオペラも懐が深い。 

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