ニューヨークシティオペラ「トゥーランドット」 〜 比較しちゃ気の毒
New York 1987/9/18

ニューヨークシティオペラのプッチーニ・シリーズを観るのも、これで3作品目となる。この「トゥーランドット」は、少し前に新聞に公演評が載っていたので読んでみると、隣のMETの舞台と対照させた書きぶりになっている。あれは映像がビデオにもなっているフランコ・ゼッフィレッリの絢爛豪華なプロダクションだから、比較するのはちょっと気の毒という気もする。お金のかけ方が全然違うだろう。かといってシティオペラの舞台もみすぼらしくもないし、歌い手もまずまずで、それなりに楽しめる「トゥーランドット」だった。

リュー役にマリア・スパカーナの名前がある。この人が蝶々さんを歌って異版も全て収録した珍品CDが、そのジャケット写真のおどろおどろしさと相俟って印象に残っている。それ以外で名前を見る機会がないから、メジャーなオペラハウスにはあと一歩の人なんだろうか。相撲なら幕内と十両、野球なら一軍と二軍、その間の微妙な位置なのかも知れない。リリカルな歌は悪くないのだけど、強い訴求力があるかとなると。

トゥーランドットを持ち役にしているソプラノは同時にワーグナー歌いということが多いが、リンダ・カームもその一人のようだ。いやはや、堂々たる体躯、どれだけ体重があるんだろうと、歌の前にそちらが気になってしまう。肥満のソプラノといえばカバリエなどの名前がすぐに思い浮かぶが、彼女も同様、これだけ太ってしまうと日常生活にも支障が出るのではないかとさえ思う。歌い手の容姿も重視されるようになった昨今のオペラ公演、彼女は外観のハンディキャップを克服する域にまで到達していないと、新聞は酷い書きぶりだ。中らずといえども遠からずというのは私の印象だ。ニューヨークの街を歩いていると、相撲取りのような体格の女性を普通に見かけるのはカルチュアショックでもある。

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