ニューヨークシティオペラ「つばめ」 〜 日本未初演のプッチーニ
New York 1987/9/19

26のオペラを書いたヴェルディには日本でまだ上演されていないものが多数ある。もう一人のイタリアオペラの巨匠プッチーニは全11作だが、日本未上演オペラがある。それが"La Rondine"(つばめ)だ。ニューヨークシティオペラが集中して取り上げるプッチーニの中に、これがあるのは嬉しい。すんなり恋人と別れる「椿姫」なんだからお話としては盛り上がらないのは仕方ないか。音楽的にも主人公マグダの第1幕のアリアはかなりの有名曲で、単独で取り上げられたりするが、それ以外は耳にすることもない。

ある意味ではプリマドンナオペラと言っていい作品、マグダを歌うのはリー・モンローというソプラノだ。悪くはないけど、この音楽もドラマも弱い作品を傑作と感じさせるほどの歌唱だったかとなるとどうかな。よほどのものを発揮しない限り、こういう傑作未満のオペラでは難しいものがある。

このリー・モンローには興味深い後日談がある。ずいぶん後にペンシルバニア州のローカル紙に載った記事を読んだ。
 彼女はシティオペラを中心にキャリアを積んだあと、このオペラハウスを主宰する往年の大歌手ビバリー・シルズの勧めでミュージカル「オペラ座の怪人」のカルロッタ役に挑戦することになった。アンドリュー・ロイド・ウェッバーが、そのオーディションのためにロンドンからコンコルドで日帰りするという段取りだった。恋人の車でニューヨークに向かった彼女は、橋を渡りいよいよマンハッタンに入ろうとしたとき、オンボロのフォルクスワーゲンの故障に見舞われる。近くのガソリンスタンドに救助を求め、「今夜のコンコルドでウェッバーへがロンドンに戻ってしまう、なんとかして」と大騒ぎ。仕方なくスタンドの従業員が車を出してくれたが、あろうことか、その車も故障。「もうこれは、私にこの役を歌うなということなの」と諦めかけたところ、スタンドの従業員が友人を呼んでくれて、マジェスティクシアターまで急行してくれた。そこでは何と、パイプの水漏れでドレスがビショビショに。そして髪を振り乱した酷い格好でウェッバーが待つ舞台に。歌どころじゃなかったが、この役の難関ハイEを張り上げて合格したということ。以来、カルロッタは当たり役として世界各地で歌うことになる。

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