メトロポリタンオペラ「ナクソスのアリアドネ」 ~ METだよ、おっかさん
New York 1987/9/23

待望のMETのシーズンが始まった。8月にニューヨークに赴任、生活のリズムも整い、9月からはニューヨーク・シティオペラでウォーミングアップ。そしていよいよ本丸、ご本尊へ。ドミンゴが歌う「オテロ」で開幕したシーズン、私の初日は「ナクソスのアリアドネ」になる。名前を聞いただけで涎が出そうな顔ぶれだ。

タウン誌New Yorkに掲載された公演写真

アリアドネをジェシー・ノーマンが歌う。キャスリーン・バトルがツェルビネッタ、音楽教師にヘルマン・プライ、作曲家がタチアナ・トロヤノス、バッカスはポール・フライ(この人はデビュー)。ピットには音楽監督のジェームズ・レヴァインが入る。演出はボド・イゲス。

ほとんどお上りさん状態だが、そこはそれ、にわかニューヨーカーを装ってファミリサークル(巨大な天井桟敷)の席に着く。すでにピットには、オーケストラが。でも、なんだか少しヘン。てんでバラバラの普通の格好で、正装じゃない。舞台の幕も開いたまま。あれっ、演奏が始まっちゃった。

"What's happening ? "と隣の席のおねえさん。あっ、そうか、これはオペラが始まる前の楽屋裏のドタバタ騒ぎ、そういう演出だ。と言うことで、ボソボソと下手な英語で解説。彼女わかったかな。

当日のキャスト表

舞台は人が入れ替わり立ち替わりで、目まぐるしい。演奏会形式での上演は東京で観たことがあるので、音楽の流れは何となく判るが、私の解さないドイツ語、字幕のないのが辛い。これまで、シティオペラで、英語字幕に慣れている身としては、METの字幕なし上演は困ったもの。これで、今シーズンに三つ聴く予定のワーグナー「ニーベルンクの指環」四部作(「ジークフリート」まで)が耐えられるかしらと心配になる。

ジェシー・ノーマンの豊麗な声に驚く、その一方でキャスリーン・バトルの声がほとんど聞こえないのにはがっかり。物理的には聞こえているのだが、この巨大なオペラハウスでは彼女は無理がある。豪華キャストとは言え、馴染みのない作品だけに、初めてのMETということはあっても、楽しさも中くらいなり、かな。

シーズンに20を超える演目、どれも錚々たる顔ぶれ、それが日本で聴くことを思えば、席に贅沢を言わなければという前提だが、信じられない安さ。さて、どれだけ通うことになるやら。

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