メトロポリタンオペラ「トラヴィアータ」 〜 不出来公演はどこにでもある
New York 1987/12/2

このシーズン、METで観たオペラでは最低の出来映えではなかったかと思う。このオペラは主役のソプラノの歌に全てがかかっている作品だから、それがダメなら他がどうであれリカバーできない。そのタイトルロールの名前はアンナ・トモワ・シントウ。

日本はもちろん、世界的にも高名と言ってよいソプラノが、この程度の出来とはがっかり以外の何物でもない。声がない上に変なヴィヴラートがある。イタリア語のディクションがおかしい。おまけに大根ときては。たんに声がないだけなら前に聴いたバトルもそうだけど、これだけマイナスのオンパレードだと、さすがに Boo! だ。それでも結構な拍手を集めているのだから不思議だ。METはおかしなこともある。
 彼女はカラヤンの引き以外にこれといった活躍があるのだろうか。後日聴いた同郷のディミトローヴァが凄かったのとは対照的だ(ディミトローヴァ自身が同じようなことを言っているのを読んだこともある)。

この公演ではアルフレード役のテノールも交代している。急な代役だったのだろう。気の毒なところがあるのは判るが、これをチャンスに檜舞台にというような歌でもない。プログラムの印刷が間に合わずに短冊が挟み込んである。

In this evening's performance of "La Traviata", the role of Alfredo will be sung by Neil Rosenstein, replacing Dano Raffanti, who is ill.

こうなると主役3人で気を吐いたのは、父親役のシェリル・ミルンズだけとなる。この人がキャリアのはじめにこの役でレコーディングした頃、イタリア語の発音が英語式になったりで酷かったのを覚えているが、今やそんなところは欠片もない。当たり前だろうけど立派なことだ。

ヴィオレッタ役に同情の余地があるとすれば、シーズンの当初は体調不良でキャンセルしていたらしいので、途中から出てきてまだ本調子ではなかったのかも知れない、月末の公演を観た友人の話ではとても良かったということだから。

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