メトロポリタンオペラ「ホフマン物語」 ~ オールアメリカンもやるねえ
New York 1987/12/21

これは素晴らしいパフォーマンス。オペラが総合芸術と言うなら、それが最も見事に結実したのがこのMETの「ホフマン物語」ではないかと思える。今シーズン観た中では最高、作品、演出、舞台装置、歌手、指揮、オーケストラ、全てのバランスがとれ、各々が高いレベルで揃っている。METの実力を遺憾なく発揮した公演。世界中のトップスターを集めるMETだけど、この日の歌手はオールアメリカンキャスト、これもすごいこと。

このオペラは、私がオペラを観始めた頃、テレビで二期会か何かの公演を見た記憶がある。どうも退屈だった印象しかない。でもこれは大違い。こんなに面白いオペラだったとは。

舞台は「トスカ」と同じように上下二層になっており、プロローグ~第1幕、第3幕~エピローグで転換する。その間、音楽は切れ目なしに続き、舞台では、地下の酒場が沈み込んだり、せり上がったりという具合。何と言っても、第1幕のオランピアの場が秀逸、徐々に色々な機械仕掛けの舞台装置が降りてきて、遊園地のような舞台が完成する。これはオットー・シェンクの演出、音楽を聴かなくても(?)充分に楽しい。

歌い手は何と言ってもホフマン役のニール・シコフ、私はシーズン後半にブラシド・ドミンゴが歌う「ホフマン物語」のチケットも買っているが、この日の歌を聴いてシコフに対する認識を改めた。日本での評価はそれほど高くないようだが、録音で聴くよりもはるかにいい。もっと軽い声の役をやる人かと思っていたが、大違い。情熱的な歌、熱演だ。

他のキャストで馴染みのあるのはジュリエッタ役のタチアナ・トロヤノス、四役をこなしたジェームズ・モリスぐらい。オランピアのグウェンドリン・ブラッドレーも、アントニアのロバータ・アレクサンダーもそれぞれにいい。

この日がMETデビューとなったシャルル・デュトワに対しては賛否両論のような感じ。私は外連身のない指揮ぶりに好感を持った。出しゃばらず、きちんとアンサンブルを引き締めるという、基本的なことが当たり前に出来る指揮者だと思う。そうでない人が多いから、余計にそう思うのかも。

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