カーネギーホールのフィラデルフィア管弦楽団 〜 居ながらにして
1988/1/19

マーラーの交響曲のなかでは取っつきにくい部類に入る第9交響曲だが、むかしFM放送でエアチェックしたキリル・コンドラシンの演奏を繰り返し聴いた。そんなことはほとんどしない私にしては、とても珍しいことだった。それで、この曲はすっかり頭に入ってしまい、1時間半近くかかる交響曲なのに、ちっとも退屈せずに聴けるようになった。

居ながらにしてメジャーオーケストラ聴き比べ。カーネギーホールにフィラデルフィア管弦楽団が来て、クラウス・テンシュテットがこの曲を指揮する。まあ、これは聴きものだろう。ニューヨークフィルの音とはだいぶ違う。オーマンディ時代の遺産か、とにかく弦楽器の音が豊麗、この曲のアダージョ終楽章にはうってつけと言える。この曲は他の交響曲にも増して、四つの楽章の個性が際立つ作品だと思うが、それぞれに面白いし、性格の違いを顕著に表出する指揮ぶりだ。優秀なオーケストラを個性的な指揮者が振るとこうなるという見本のような演奏、とても面白かった。

ニューヨークタイムスの評者によれば、今回の第9交響曲の演奏は83分を要し、スピードスターであるユリアフ・インバル指揮フランクフルト放送交響楽団のライブよりも10分長く、スローモーション・チャンピオンであるマイケル・ティルソン・トーマス指揮ボストン交響楽団よりも7分速いということらしい。だから中庸のテンポというわけでもないのだろうが、ストップウォッチ片手に音楽を聴いていたのだろうかと思うとなんだか可笑しい。

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