レナータ・スコットのリサイタル 〜 これは素敵
New York 1988/2/11

メトロポリタンオペラがあるリンカーンセンターは、まさにミュージックコンプレックスと言っていい。METの正面に向かうと左手にニューヨークシティオペラのニューヨーク州立劇場、右手にニューヨークフィルの本拠、エイヴリー・フィッシャー・ホール、そして右手の奥まったところにジュリアード音楽院とアリス・タリー・ホールがある。この日は、その奥まったところに足を踏み入れる。初めてだ。

レナータ・スコットのリサイタル、多数の有名歌手がMETの舞台に立つのだが、1987-88シーズンにこの人の名前はない、なので、またとない機会、録音は別として、日本でも聴いたことがないのだから。

プログラムは軽めの内容かな。ヴェルディやプッチーニのナンバーはないし、それ以前の作品と、それ以降の作品というラインアップだ。グルック、ペルゴレージ、ロッシーニ、モーツァルト、マスネ、レスピーギ、ヴォルフ=フェラーリという作曲家の名前が並ぶ。意識的に彼女がMETで歌ったような役柄を避けて選んだという想像が働く。まあ、そういうことなんだろう。これからキャリアを築く新進歌手なら、デモンストレーションとして重いアリアを並べるかも知れないが、彼女は大ベテラン、そういう人のリサイタル選曲ということだろう。

リサイタルの定番のようなロッシーニの「ヴェネツィアの競艇」、3曲の表情漬けの見事さはオペラの舞台で活躍した人ならでは、予定されていた「ワリー」の有名なアリアに替えて歌われたレスピーギとヴォルフ=フェラーリ、最後の「イル・カンピエッロ」からの「さようならヴェネツィア」という曲は初めて聴いたが、とても素敵な歌だった。

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