メトロポリタンオペラ「ジークフリート」 〜 完結編はお預け
New York 1988/2/12

METの「ニーベルンクの指輪」の3作目、最後の「神々の黄昏」は来シーズンとなるので、この「ジークフリート」が私が観ることのできる最後の作品となる。この演目は今シーズンから、そしてこの日がプレミエだ。

題名役はMETデビューのウォルフガング・ノイマン、この人はペーター・ホフマンに代わってクレジットされたらしい。ホフマンを聴いたことはないので、どちらがどうとの比較は出来ないが、巨大な舞台でジークフリートを歌うに充分なパワーを持っている人のよう。
 ブリュンヒルデはヒルデガルド・ベーレンス、12月に観た「ワルキューレ」に続いてこの役だ。両作品の間にエレクトラを歌うのも聴いているから、ワーグナー、シュトラウスのヘビーな役を立て続けに聴いたことになる。まさに絶頂期、この人は重量級の役でも、力強さと柔らかさを併せ持つのが当代一のワーグナー歌いたる所以だろう。耳に刺さるような叫び声は皆無だし、つねに音楽的だ。
 ヴォータン(さすらい人)はドナルド・マッキンタイヤー、これでジェームス・モリス、ハンス・ゾーティンと、三人のヴォータンを聴いたことになる。三作それぞれに大物をあてがうことができるのはMETならではだろう。

この「ジークフリート」は、四作のなかでは長くて変化に乏しい作品なので字幕がないのが辛い。お話の流れは判っているから、ジェームズ・レヴァインの指揮するオーケストラに身を任せて4時間超の時間を過ごせばいいので、細かなことは気にしない。オットー・シェンクの台本どおりの舞台は刺激がないとも言えるが、この作品の舞台上演を観たことがない私には入門編ということでいいのかも。日本にいると、途中で退屈するに決まっているオペラに高い金を払う気にはなれないが、METの最安席だとそういう発想は無用、その気になれば毎日でも通える値段だから。天井桟敷のファミリーサークルにいると、いつも顔を見かけるおじいさんがいるぐらいだ。

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