メトロポリタンオペラ「トゥーランドット」 〜 二度目はぼちぼち
New York 1988/3/2

年末に観た「トゥーランドット」の舞台は衝撃的だった。演出の豪華絢爛さはビデオ映像で目にしていたものだが、実際のMETの舞台にかかるとその規模や存在感は圧倒的だった。シーズンプログラムの表紙を飾るぐらいだからMETの看板演出であることは間違いない。しかし、それよりも何も、題名役のゲーナ・ディミトローヴァの声には驚いた。あの巨大な空間を満たす響きなのだから。

そして、二度目の「トゥーランドット」。この日のトゥーランドットはマリタ・ナビエ。相手役にはエルマンノ・マウーロ、リューはレオナ・ミッチェル、ティムールはポール・プリシュカというキャスト、指揮はネッロ・サンティで変わらず。

一度目の興奮のあと、二度目ともなると落ち着いて鑑賞ということになる。やはりタイトルロールの差は大きい。何しろ東欧の超弩級ドラマティコのMETデビューと比べると気の毒ということか。エルマンノ・マウーロは大きな声が出るものの、ドミンゴのような陰影があるわけじゃないので平板さが耳につく。MET向きではあるんだろうけど。

ゼッフィレッリの演出・装置の作品をMETで四つ観たことになる。「トスカ」、「ボエーム」、「オテロ」、それにこの「トゥーランドット」だ。スポンサーの意向もあるのか、ひたすら贅を尽くした舞台、アッと驚くような舞台転換、圧倒的なスペクタクル、オペラの醍醐味満載というところ。この舞台ならポンとカネを出ししてもいいと思う気持ちは分からなくもない。毎シーズンのように再演を繰り返しているから、ある程度は償却できているのだろうが、それでも物いりだろう。しかし、ある意味では文化財的な存在か。日本に戻ると観る機会がなくなるのが残念。

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