カーネギーホールのヨーロッパ室内管弦楽団
New York 1988/3/3

ミッドタウン57丁目のカーネギーホールにもずいぶんやって来た。ちょうどオフィスと自宅アパートの中間、コンサートが終わればバスで戻る。地下鉄でもいいのだが夜も更けるとバスのほうが安全だし、停留所からの距離も短い。そんな生活も残りわずかとなった。

クラウディオ・アバドの指揮、マーラーの「リュッケルト歌曲集」のソリストはメゾソプラノのフローレンス・クイヴァー。アバドはレコードでは馴染みの音楽家だが、生演奏は聴いたことがないのだ。ニューヨークに来てからもCDをけっこう買い込んものの、そんなことをしなくてもナマで聴けるのに。まあ自分への土産と考えればいいか。

プロコフィエフの古典交響曲で始まり、メインはメンデルゾーンのスコットランド交響曲、その間にマーラーとシェークベルクとが挟まるという面白いプログラムだ。なかでも休憩後に演奏されたシェーンベルクの「室内管弦楽のための3つの小品」は、拍手に応えて全曲アンコールということで吃驚、まあそれだけ短い曲ということだし、難解過ぎて一度聴いたぐらいではわからないということか。もっとも二度聴いたところで心許ないのだけど。

マーラーの歌曲は演奏頻度は高まっているとはいえ、リュッケルト歌曲集はどちらかと言うと機会は少ないほうだし、シェークベルクに至ってはなおさら。真ん中に置かれた曲は何となく難しい。それを古典的なスタイルのシンフォニーで挟むというのは、明晰さで晦渋さを挟むという趣向のようにも見える。それが成功したかどうかは何とも言えないのだけど、期待したほどのものが得られるコンサートでもなかったような気がする。アバドは立派な指揮者なんだろうけど、もうひとつピンと来ないところがあるなあ。

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