バルツァ&ドミンゴのガラコンサート 〜 これはなかなか重量級
New York 1988/3/13

ひと月ほど前に聴いたレナータ・スコットのリサイタルとは対照的な、METでのガラコンサートだ。アグネス・バルツァとプラシド・ドミンゴというビッグネーム、そしてネッロ・サンティの指揮とくれば、これはオペラの舞台同様のものになるに違いないと期待が膨らむ。プログラムはなかなか重量級だ。まあ、アリス・タリー・ホールとMETでは会場の大きさは比較にならないし、リサイタルとガラコンサートでは違って当然か。

二人のデュエットは、「アイーダ」の第四幕、「カヴァレリア・ルスティカーナ」、「カルメン」の第四幕のナンバーが選ばれ、間にそれぞれの得意のアリアが配されるというプログラム。コーラスも出演するので「トロヴァトーレ」や「ナブッコ」さらに「カルメン」の終幕の合唱もある。

どれをとっても聴き応えがある。ドミンゴが歌う「ボエーム」のアリアというのは、プッチーニじゃなくてレオンカヴァッロのものだった。そりゃそうだ。今だと「冷たい手」なんて、声域的にちょっと苦しいはずだから。同じロドルフォでも「ルイーザ・ミラー」のほうは彼に最適だ。「アドリアーナ・ルクヴルール」のアリアを入れているのは、フランコ・コレッリの代役でMETデビューしたときの作品ということもあるのだろうか。

バルツァのほうは、「湖上の美人」、「ファヴォリータ」と、ベルカントもののナンバーを披露するという対照的な選曲。インターバルのオーケストラナンバーも、「アルジェのイタリア女」に「友人フリッツ」、両者のバランスをとっているのが面白い。

何と言っても二人のデュエットが圧巻、それぞれが激しい感情の激突する場面だけに、まさに丁々発止という言葉が似合う。アムネリス、サントゥッツァ、カルメンと、女性のほうが個性的であるだけに、バルツァが押し気味ではあるが、がっちりと受け止めてドミンゴも横綱相撲の風情だ。一場面を切り取っただけなのに、 オペラの舞台を観るようだ。すっかり満腹感。

4月からは国内勤務となるから、ニューヨークで接する公演もあと僅かということになる。半年ほどの間にずいぶんたくさんの音楽を聴いた。METのシーズンレパートリーで観られなかったものも4つほどあるが、よくもまあ足繁くリンカーンセンターに通ったものだ。まさに、夢のような半年ということか。日本に戻ったら懐かしく思い出すことになりそう。欲求不満が嵩じないか、いまから心配になる。

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