ウィーン国立歌劇場「オテロ」 ~ 駆け込み"第一声"
Vienna 1992/2/9

プラシド・ドミンゴがタイトル・ロールを歌う「オテロ」、ニューヨークで二度聴いたのは、もう5年前のこと。そして、今またウィーン国立歌劇場で相まみえる。カレン・エスペリアンのデズデモナ、ピエロ・カップッチッリのイャーゴという顔合わせ、指揮はヤン・ラザム=ケーニヒ、演出はピーター・ウッド。

マチネならともかく、18:00開演というのは珍しい。日曜日の夜の公演だからか。それは判っていたのに、遅刻!何と、腕時計が止まっていた!よりによってこんな時に!!オペラハウス近くのレストランから、カミサンとダッシュ。昨日も来たから内部の勝手は分かっているとは言え、大きな建物なので目指す二階バルコニーまでは遠い。あっ、冒頭の嵐の音楽が始まっているではないか!コーラスも聞こえてきたぞ。

ようやく、座席近くに辿り着いたら、アッシャー氏、そっと我々二人をカーテンの陰から客席に入れてくれた。時あたかもキプロスの港に軍船が接岸する。船から下りたオテロが"Esulutate!(喜べ!)"と第一声をあげる直前。いやあ、間に合ったみたい。

METでもそうだったが、ドミンゴのオテロは、ドラマが進むに連れて、引き込まれていく。嫉妬と猜疑に苛まされて正気を失っていく過程、ドミンゴの歌と演技、まさに鬼気迫るものがある。ここウィーンでも同じ、共演のカップッチッリもアクの強さで、イヤーゴにはまり役。ウィーンでのロールデビューとなるエスペリアンのデズデモナの存在感が薄いのが残念。

パンフレットに掲載された舞台写真

終幕は圧巻、ここではオテロの登場までにデズデモナの長い歌があるのに、それも霞んでしまう。ドミンゴが登場するところから、破局に至る幕切れまで、息もつかせない。他に登場人物はいるのに、まさに一人舞台。

オーケストラはやや粗い感じ。指揮者の問題かも知れないが、これがウィーンフィルの母体の国立歌劇場管弦楽団なのか。9月から200日を超える連日連夜のピットだし、メンバーも交替制だろうし、ベストパフォーマンスが続けられるとは思わないけど、これは、ちょっとね。

プロダクションもフランコ・ゼッフィレッリの舞台を観た後では、比較するのは気の毒という感じもある。貧相なことはないにしろ、ほどほどのところか。

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