ウィーン国立歌劇場「セヴィリアの理髪師」 ~ レパートリー公演は
Vienna 1992/2/10

路面電車に乗ってあちこち回っていると日中の時間はあっという間に過ぎる。日も暮れるとウィーンでの三本目のオペラ、リヒャルト・シュトラウス、ヴェルディと続いて今夜はロッシーニだ。このオペラハウスの演目は大変な数になる。いわゆるレパートリー方式で、旅行者にとっては日替わり演目で有り難いものの、各公演のレベルはまちまちとなる。前夜がドミンゴを据えた目玉公演だとすれば、この「セヴィリアの理髪師」は典型的なレパートリー演目というところか。ルーチンと言っては語弊があるが、普段着の公演であることは間違いないだろう。

アルマヴィーヴァを歌ったデヴィッド・キュブラー、ロジーナのガブリエレ・シマといった名前に覚えはないし、指揮者のポール・コネリーという名前も聞いたことがない。こうしてみると、ヨーロッパは広い。ちょっとした街にはオペラハウスがあって、毎日たくさんの歌手たちが歌っているのだ。我々が日本にいて知る名前なんて、ほんの一握りということだろう。METで観ていたときはヨーロッパで名前の売れた人が大西洋を渡って来ていたので親しい名前が多かったが、ヨーロッパで活躍している人はその何倍もいるということか。これも実際に来て観てわかることなのかも。

2階建ての舞台で登場人物が入れ替わり立ち替わりという演出で、それはそれで面白いのだけど、歌の魅力が味わえたかとなるとどうなんだろう。幕切れのアンサンブルを聴いていて、それまでのドラマ進行の総括としての充実感があまり得られないのはなんだかなあという感じ。まあこんなものか。ウィーンで三日連続でオペラを観て、このオペラハウスの感じが何となく判ったような気にもなる。それが当たっているかどうかはともかくとして。

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