ロイヤルオペラ「ボエーム」 ~ いかにも、それらしい二人
London 1992/5/28

ニューヨークで観たパヴァロッティとフレーニの「ボエーム」、若い貧乏詩人とお針子の物語にしては、食うや食わずとはとても思えない巨躯、人生経験が豊かすぎるオバサンという組合せだったが、このロイヤルオペラのカップルは、いかにもそれらしい。年齢にしても、容姿にしても。このシーズンがコヴェントガーデンへのデビューとプログラムにあるぐらいなので、若い。二人の名前は、ロベルト・アラーニャとアンジェラ・ゲオルギュウ。

公演プログラムの配役表1
公演プログラムの配役表2

海外でオペラを観たのは、9か月ほど住んだニューヨークが最初。そして15年目の休暇で慌ただしくウィーンとミラノを駆けめぐり、もう、しばらくは行く機会もないかなと思っていた矢先に転勤。何と、国際関係の財団に出向、年に二回は調査のための海外出張がある。慣れない仕事は大変だが、ヨーロッパへの出張となれば、オフタイムの楽しみは、いっぱい、ある。仕事で読むファイナンシャルタイムズのアート欄は欠かさず目を通すという習慣が(^^)

そして最初の出張が経済統合を控えたヨーロッパ、ブリュッセルに入り、次の訪問地がロンドン。むかし一緒に仕事をした後輩に邂逅、慶應義塾ワグネルソサエティ出身の彼と目指すは、当然コヴェントガーデンということに。

このボエームはレーザーディスクにもなっている演出だ。あれはニール・シコフとイレアナ・コトルバスのコンビで、私のお気に入りのひとつ。配役こそ違え、フレッシュな歌手で、その舞台を生で観られるとは、しあわせ。日中のストレスも解消する。

デビューシーズンということなので、まだビッグネームでもないし、客席の反応だって熱狂的とは言い難い状態。でも、悪くない。特に、ゲオルギュウのミミは、清潔感のある歌でいいなあ。アラーニャのロドルフォも高音の不安もなく、若々しい詩人で好感が持てる。

アンソニー・マイケルズ=ムーアのマルチェッロ、ジュディス・ハワースのムゼッタとのアンサンブルもいい。強烈な印象こそないものの、なかなかまとまりのあるプロダクションだ。演出はジョン・クープレー、指揮はマーク・エルムレルという来日公演でも聴いた人。

(追記)
 このロベルト・アラーニャとアンジェラ・ゲオルギュウが結婚したというニュースを聞いたのは、だいぶ経ってからのこと。このときのコヴェント・ガーデンでの共演が縁なのかどうか知らないが、その後の活躍で、オペラ界のゴールデン・カップルになったということ。ただ、さらにその後、どちらもトラブルメーカーになってしまったというのも、なんだかねえ。デビュー当時の清新さ謙虚さを保ち続けることの難しさか。オペラ歌手にはそんな例が数多い。

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