ロイヤルオペラ「サロメ」 ~ ええーっ、そこまでやるの!
London 1992/5/30

ただでさえ暑いロイヤルオペラハウスの天井桟敷、と言うのも、ここには冷房というものが、ない!ロンドンでは、クーラーのない建物は少なくないらしいが、オペラシーズンも終盤のこの時期、やはり人いきれもあって暑い。それに、この日はもうひとつ別の熱気が…

ピーター・ホールの演出、エドワード・ダウンズの指揮、タイトル・ロールをマリア・ユーイングが歌う。しばらく前に、この出し物を観たロンドン在住の後輩曰く、「あれは見ものですわ。ま、とにかく」
 そんなわけで、初めての海外出張の週末、地下鉄に乗ってコヴェント・ガーデンへ。

この公演は、当日のプログラムにもノーティスがあったように、録画され市販されている。まあ、演出に注目。有名な「七つのヴェールの踊り」、ふつう歌手は歌うだけで、踊りとは言えないような人もいるし、そもそも踊りはダンサーで吹き替えというケースもある。ところが、マリア・ユーイングは、歌って、踊って、どころか…

一幕もののオペラも後半、強烈なオーケストラ伴奏に乗って、踊りが始まる。あるときは激しく、あるときは妖艶に。七つのヴェールと言うからには、それを順に取っていく訳で、と言うことは、つまり。

うわあー、オペラハウスでここまでやるの。マリア・ユーイング、全部取っちゃった(・。・)

これが原作どおりだし、台本にそこまで書いているのかどうか未確認だが、踊りの最後には一糸まとわぬ姿に。天井桟敷からオペラグラスを通して、彼女の叢まで見えてしまう(さすがに録画だと、このシーンはカメラを相当に引いている)。

公演のプログラムより(1/3)プリマドンナらしくない(?)スレンダーボディ、そんなに大きくはない胸、妖婦というよりも少女の面影を残したサロメ。それにしても、文字通り体を張った演技、これじゃピットのオーケストラも気が散ってしまうかも。

何だか、ヴジュアル面ばかりで、肝心の音楽がどこかに行ってしまう感がある。ただ、「踊り」以降は音楽の密度が急に高まった気がした。他の配役は、ナラボートがロビン・レッジェート、ヘロデがケネス・リーゲル、ヘロディアスがジリアン・ナイト、ヨカナーンがマイケル・デヴリンというもの。あまりにもマリア・ユーイングが強烈すぎて、個々の歌手の歌唱について思い出せないというのも、困ったものだ。

公演のプログラムより(2/3)
公演のプログラムより(3/3)
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