チューリッヒ歌劇場「魔笛」 〜 お子様向きのオペラなのか
Zurich 1993/11/6

チューリッヒは空港から市街が近い。荷物が早く出てくると、タクシーを使えばホテルに落ち着くまで着陸から1時間もかからない。そして、ホテルからは路面電車に乗り、僅かな時間でオペラハウスに到着。初めて足を踏み入れるチューリッヒ歌劇場、1年前にもこの街に来たのだが、そのときは一日違いで「運命の力」を観られなかった。ここは1000名少しのキャパシティ、足繁く通ったMETと比べたら可愛い劇場だ。これなら歌手も、無理に声を張り上げなくてもいいのだろう。

週末の土曜日、この「魔笛」の客席には子供の姿が目立つ。いつもそうなんだろうか。ここはドイツ語圏なので、彼らも歌詞が判るというのもあるだろうし、おとぎ話という見方もできる作品だけど、表面的な物語には何かと含意がありそうなモーツァルトの最後のオペラだから、彼らには理解できないことも多いはず。とは言え、いろんな楽しみ方ができるモーツァルトでもあるのだけど。

チューリッヒはスイス第一の劇場であるにしても、街の規模を思うと公演数が半端じゃない。日替わり演目で新演出も目白押しだ。それだけ財力があるということなんだろうか、ドイツ、イタリア、フランスの真ん中にあって、歌手を集めやすいという地の利もあるのかも。
 この「魔笛」は、どちらかと言うとレパートリー公演の位置づけになるだろう。劇場の機関誌を見ても扱いが小さいし、注目度は高くないようす。ジャン・ピエール・ポネルの演出で上演を重ねている舞台だろう。夜の女王役にエレナ・モシュクの名前が見えるくらいで、著名な歌い手の名前は見当たらない。ただ、アンサンブルの緊密さ、舞台の完成度ということでは、このオペラハウスの水準を推し量るに充分なものがある。子どもだけじゃない、大人も楽しめる上演だ。こぢんまりとしたいい雰囲気の劇場だ。

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