チューリッヒ歌劇場「ファルスタッフ」 〜 初演100年、ヨーロッパでも
Zurich 1993/11/7

初演から100年、1993年はあちこちで「ファルスタッフ」が上演される。ヴェルディ作品の中で上演頻度が高いとも言えないオペラなのに、ちょっとした異変だ。既に東京で二度観ている。ひとつは読売日本交響楽団による演奏会形式、もうひとつはヘネシーがスポンサーになっている小澤征爾指揮による公演だった。前者の指揮台に立ったのがネッロ・サンティ、奇しくもその人がチューリッヒ歌劇場のピットに入る公演に出張先で遭遇するとは。

前日、オペラハウスの窓口でチケットを購入したとき、窓口の女性が「とっても綺麗な舞台ですよ」なんて言っていたジョナサン・ミラーの演出だ。確かに、新奇な試みはないけど、落ち着いた色彩で、なかなかいいプロダクションだ。劇場の広報誌の表紙を飾っている。その広報誌にはファン・ポンスという記述だったが、題名役を歌ったのはアルベルト・リナルディだった。

東京のときもそうだったけど、このアンサンブルが重視されるオペラで、サンティが指揮すればもう安心というもの。ギョロリとした眼差し、マフィアのドンのような堂々たる体躯、そのまま老騎士役で舞台に上がれそうな感じ。あまりコマーシャリズムに乗りそうもない風貌だが、この人の振るヴェルディは、実のところ当代一だと思う。METでも常連だったし、ヨーロッパでも。そして、歌手たちの信任も厚い。録音での受容のウエイトが高い日本とではだいぶ事情が異なるのだろう。

チューリッヒのオペラハウス、週末に連日通って、ほんと気に入ってしまった。

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